卵のつがい
第一章
1−20
確かに昔から父親のような男性と結婚するのが夢だった。それは今
も変わらない。エポックが言うように、イースと筋肉質で体の大きか
った父親とでは外見からしてまったく違う。むしろ外見だけだったら
エポックのほうが似ている。だから彼が不思議に思うのも当然のこと
なのかもしれない。
(まぁ、だからってエポックと恋人になりたいなんて思ったこともな
いけどね)
だいたいイースのこともそういう目でみたことはないのだ。
(ただ気になるっていうか。母さんを診察してくれたときの目とか、
家から出ていったときの顔つきは父さんみたいだったからドキッとし
たけどそれだけだし……ってこの説明でもエポックは照れ隠しだと勘
違いするわね……)
どう説明すればきちんと理解してもらえるのだろう。ミラは歩きな
がら眉間にしわを寄せた。
(……そもそもなんで必死になって否定してるんだろう? エポック
なんか勝手に勘違いさせておけばいいだけの話なのに)
しかし勘違いさせたままイースに会わせてしまえば、あの幼馴染の
ことだ。あることないことを告げ口するに違いない。
(それにイースだって勝手にあたしと恋人になんてされちゃったら迷
惑よね)
ふいによぎった可能性がちくりと心臓に刺さる。ミラは痛みを紛ら
わそうと胸元の服を手繰り寄せた。
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