卵のつがい



第一章

1−21



「ま、どうでもいいことだけどな。あ、あれがアラバの森じゃないか?

やっとついたー」


 黙考しているとエポックが勝手に話を切り上げてきた。そしておも

むろに前方を指差す。入道雲がもくもくとわき出ているかのように無

数の木々が生い茂っていた。


「あの向こうにイースのいる学園があるんだ……」


 ここへくるまで一度も感じなかった不安が一気に押し寄せてくる。


(手紙ではそんな素振りはなかったけど、わざわざ会いに行って冷た

くされたらどうしよう。ううん、それよりもあたしの顔を忘れてる可

能性もあるわよね?)


 考えれば考えるほど、嫌なことを思い浮かべてしまう。


「おいミラ、何やってんだ? そんなところで止まってないでさっさ

と歩けー!」


 前を歩くエポックの声に我に返る。黙考している間にずいぶんと離

されてしまったようだ。


「わかってるわよ」


 ミラは置いて行かれないようにとエポックの元へ駆け寄った。まず

は自分の責務をしっかりと果たさなくては。イースに会うのは仕事が

終わってからだ。不安になるのはそれからでも遅くはないだろう。近

づくにつれだんだんと大きくなっていく森を見つめながらミラはそう

心に誓った。










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