卵のつがい



第二章





「ようこそアラバへ」


 両手を広げ、村長らしき人物が出迎えてくれる。白髪を七三に分け

た短めの髪が、長身で細身の男性にはよく似合っていた。いかにも人

のよさそうな笑みをした男性の前へ、上司でもありモモンガを守る会

の責任者でもあるピックスが出た。


「今回の件を承諾してくだりありがとうございます」


 ピックスが堂々とした態度で村長へ握手を求める。村長と並ぶとピ

ックスの体の大きさは歴然で。怖面の男に見下ろされた村長がそのま

ま腰を抜かしてしまうのではないかとミラは内心ひやひやした。しか

し、さすが村長というべきか。村長の顔には先ほどよりさらに深く笑

顔が刻まれていた。


「数年前から少しずつ数を増やしていったあの小動物の名前がわかっ

てこちらこそ渡りに船だったんですから、そんなにかしこまらず」

「そう言ってもらえると助かります」

(ピックスおじさんの顔に怯えないなんてあの村長さんすごい!)


 きっと同僚たちも自分と同じことを思っているに違いない。アドノ

ーの薬草店の主も厳つい顔をしていたが、ピックスはそれ以上なのだ。

ミラはピックスたちに気づかれないよう視線を同僚たちへ向けた。案

の定、みんな一様に驚いた顔をしている。中でもピックスの息子、エ

ポックは、顎が外れたのかと勘違いしてしまいそうなほど大きく口を

開けたまま呆けていた。










一つ前を読む   小説の部屋へ戻る   次を読む






QLOOKアクセス解析