卵のつがい



第二章





 ピックスは背後にいる人間たちことなど気にしたふうもなく、村長

と話を進めている。


「それで、明日からについてなんですが……」

「そうですな。それでは詳しい話は我が家でするとしましょうか」

「助かります。……というわけだ。お前たちは今日泊まらせてもらう

家々に向かえ。ん? どうかしたか?」


 ピックスがおもむろに振り返った。固まっている部下たちを目にし、

訝しく思ったのだろう。彼の眉間にしわが寄った。その表情の変化に

一際早くエポックが反応する。


「いや、なんでもねー……じゃなくてなんでもないです。はい」


 ギロリと睨まれ、エポックが頬をひきつらせながら愛想笑いを浮か

べた。それに満足したのか、ピックスが全員へ視線を動かす。


「いいか、この村には宿屋がないんだ。本来だったら野宿だったとこ

ろを村長さんや村の方々が気の毒に思ってくれて家に泊めてもらえる

んだからな! そのことを重々忘れるなよ」

「「ハイ!」」


 鋭い眼光とドスの効いた声で発せられた言葉にミラは両手を脇につ

け背筋を伸ばした。










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