卵のつがい



第二章





「それを聞けて安心じゃ。あ、そうじゃったイース。セレナさんかエ

ルを呼んで来い」


 アルフがにこやかに首を縦に振る。そして後ろにいるイースへ話し

かけた。しかし、先ほどから瞳を見開いたまま呆けているイースには

アルフの声が聞こえていないらしい。返答のないイースを不思議に思

ったのか、アルフが眉間にしわを寄せ振り返った。


「おいイース聞いておるのか?」

「は、はいっ、ただいま」


 アルフの睨みが効いたのか、微動だにしなかったイースが再び動き

出す。頭をペコペコと下げ、勢いよく後ろへ体を向けた。


「あ、危ない!」


 イースへ危険を知らせようと発した声は一足遅かったようだ。今閉

まったばかりの扉へイースが顔を激突させる。


「何をやっとるんじゃ? 大丈夫か?」


 ものすごい音にアルフがイースの体を自分の方へ向ける。そしてぶ

つけた場所を確認し始めた。


「は、はい。だ、大丈夫……です……」


 扉へあたった拍子にずれた眼鏡を直しながらイースが照れくさそう

に頭をかく。それを見て怪我がないと判断したのだろう。アルフが呆

れた様子でため息をついた。










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