卵のつがい
第二章
6
「ねぇ、今、すごい音がしたけどどうしたの?」
扉がそっと開き、中から女の子の声が聞こえてきた。10歳くらい
だろうか。褐色の肌に、黒髪のおかっぱ頭がよく映えている。
「いや、なんでもないんだ。ただ扉が閉まっていたのを忘れてて……」
イースは心配げな表情の少女と向かい合い、ばつが悪そうに寝癖の
ついた髪をなでた。
「まったく、もう少し落ち着いて行動せんから扉なんぞに顔をぶつけ
るんじゃぞ」
説教じみたアルフの言葉に少女の円らな目がさらに丸くなる。
「やだ、お兄ちゃん大丈夫? 『ハゴソウ』いる?」
「いらん、いらん。薬をつけるような怪我なんぞしておらん。だいた
い前から言っとるじゃろう……」
アルフが家の中へ戻ろうとする少女を一蹴してとめる。ミラはその
まま話を続ける3人に割って入るタイミングを逃し、途方にくれた。
ふいに背中をちょんちょんとつつかれる。何の気なしに振り返って
みると、先ほど村の入り口で別れたはずのエポックがニヤニヤと嫌な
笑みを浮かべて立っていた。
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