卵のつがい



第二章





「ねぇ、今、すごい音がしたけどどうしたの?」


 扉がそっと開き、中から女の子の声が聞こえてきた。10歳くらい

だろうか。褐色の肌に、黒髪のおかっぱ頭がよく映えている。


「いや、なんでもないんだ。ただ扉が閉まっていたのを忘れてて……」


 イースは心配げな表情の少女と向かい合い、ばつが悪そうに寝癖の

ついた髪をなでた。


「まったく、もう少し落ち着いて行動せんから扉なんぞに顔をぶつけ

るんじゃぞ」


 説教じみたアルフの言葉に少女の円らな目がさらに丸くなる。


「やだ、お兄ちゃん大丈夫? 『ハゴソウ』いる?」

「いらん、いらん。薬をつけるような怪我なんぞしておらん。だいた

い前から言っとるじゃろう……」


 アルフが家の中へ戻ろうとする少女を一蹴してとめる。ミラはその

まま話を続ける3人に割って入るタイミングを逃し、途方にくれた。

 ふいに背中をちょんちょんとつつかれる。何の気なしに振り返って

みると、先ほど村の入り口で別れたはずのエポックがニヤニヤと嫌な

笑みを浮かべて立っていた。










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