卵のつがい



第三章





「今日からいよいよ森の中へ探索だ」


 集まり始めた皆を一瞥したあとピックスが口を開く。

一番遅かったため、何らかのお小言があるのかと

ビクビクしていたが今回は見逃してくれるようだ。

きっと村長と美味しいお酒でも飲んだのだろう。

ピックスの機嫌良いときの理由はそれくらいしかない。


(村長さまさまね)


 胸をなでおろしつつ、

ミラは話し続けているピックスの声に集中した。


「知ってのとおり、アラバの森は

王の命により侵入者が入らないように

この村の住民たちが監視している森だ。

そこで今回はエルとお医師様の卵であるイースが

森の案内人を買って出てくれた」


 ピックスが一歩下がり二人へ目を向ける。

ピックスを挟むようにしてエルとイースが立っていた。


「それじゃあエル、自己紹介を頼むな」


 ピックスに促され、エルが前に出る。

周りから小さく息をのむ音が聞こえてきた。

きっとまだあどけない子供のエルに驚いたのだろう。

いくら森の中に詳しいからと言って子供が案内するとは

思ってもみなかったに違いない。

自分も彼女と話をするまではそう思っていた。

だが、とても大人びた話し方をするエルに

ミラは自分の考えを霧散させた。










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