卵のつがい
第三章
8
「今日からいよいよ森の中へ探索だ」
集まり始めた皆を一瞥したあとピックスが口を開く。
一番遅かったため、何らかのお小言があるのかと
ビクビクしていたが今回は見逃してくれるようだ。
きっと村長と美味しいお酒でも飲んだのだろう。
ピックスの機嫌良いときの理由はそれくらいしかない。
(村長さまさまね)
胸をなでおろしつつ、
ミラは話し続けているピックスの声に集中した。
「知ってのとおり、アラバの森は
王の命により侵入者が入らないように
この村の住民たちが監視している森だ。
そこで今回はエルとお医師様の卵であるイースが
森の案内人を買って出てくれた」
ピックスが一歩下がり二人へ目を向ける。
ピックスを挟むようにしてエルとイースが立っていた。
「それじゃあエル、自己紹介を頼むな」
ピックスに促され、エルが前に出る。
周りから小さく息をのむ音が聞こえてきた。
きっとまだあどけない子供のエルに驚いたのだろう。
いくら森の中に詳しいからと言って子供が案内するとは
思ってもみなかったに違いない。
自分も彼女と話をするまではそう思っていた。
だが、とても大人びた話し方をするエルに
ミラは自分の考えを霧散させた。
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