卵のつがい



第三章





「おはようございます。エルです」


 短い髪を揺らしエルがお辞儀をする。

昨日の黄色と黒の格子が入ったスカート姿とは違い、

今日は茶色のズボンを履いていた。

森の中を探索するからだろう。

男の子と見間違えてしまうほどエルによく似合っていた。


「普段からお婆ちゃんの代わりに森の中へ入っているので

案内は任せてください」


 溌溂とした表情で話すエルを横目にミラは、

イースの方へと視線を向ける。

今日も変わらず彼の髪にはしっかりと寝癖がついていた。

ミラがくすりと小さく笑うとその声が聞こえたのか、

イースが眼鏡を手の甲で押し上げながらこちらを見た。


「イース、おはよう」


 声を出さずに口のみを開く。

そしてイースだけに見えるようにと、小さく手を振った。

しかし気付かなかったのか、すぐに目線を反らされる。


(あれ? こっちを向いたと思ったのに……)


 勘違いだったことに恥ずかしくなりミラは、

動かしていた左手をぎゅっと握りしめた。

だが、イースが再度こちらへ視線を向けてくれるかもしれないと

思うと下を向くこともできず、ミラはイースをじーっと見つめた。










一つ前を読む   小説の部屋へ戻る   次を読む






QLOOKアクセス解析