卵のつがい
第三章
9
「おはようございます。エルです」
短い髪を揺らしエルがお辞儀をする。
昨日の黄色と黒の格子が入ったスカート姿とは違い、
今日は茶色のズボンを履いていた。
森の中を探索するからだろう。
男の子と見間違えてしまうほどエルによく似合っていた。
「普段からお婆ちゃんの代わりに森の中へ入っているので
案内は任せてください」
溌溂とした表情で話すエルを横目にミラは、
イースの方へと視線を向ける。
今日も変わらず彼の髪にはしっかりと寝癖がついていた。
ミラがくすりと小さく笑うとその声が聞こえたのか、
イースが眼鏡を手の甲で押し上げながらこちらを見た。
「イース、おはよう」
声を出さずに口のみを開く。
そしてイースだけに見えるようにと、小さく手を振った。
しかし気付かなかったのか、すぐに目線を反らされる。
(あれ? こっちを向いたと思ったのに……)
勘違いだったことに恥ずかしくなりミラは、
動かしていた左手をぎゅっと握りしめた。
だが、イースが再度こちらへ視線を向けてくれるかもしれないと
思うと下を向くこともできず、ミラはイースをじーっと見つめた。
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