卵のつがい
第三章
10
「おい、彼氏ばっかり見てないでちゃんとあの子の話聞けよな」
ふいに横合いからエポックに小突かれる。
ミラは慌てて否定した。
「み、見てないし」
図星を指され、うろたえながらもエルの声に耳を傾ける。
しかし、ちょうど挨拶が終わってしまったようだ。
頭を下げているエルへ拍手が湧き起こる。
ついついイースのことが気になってしまい、
エルには申し訳ないことをした。
あとできちんと謝ろう。
胸の内で誓っていると、エルが一歩さがりイースへ場所を譲った。
(やだ。次はイースの番じゃない……ちゃんとできるのかしら?)
まるで子供を初めて同世代の中へ送り出す母親のような気分だ。
ミラはハラハラしながら皆の視線を一身に集めるイースを見守った。
「初めまして、イースです。
王都にあるアテューツ学園で医師になるための勉強をしています」
どうやら自分の心配は杞憂だったらしい。
固唾を飲み聞こえてきたイースのきちんとした話し方に
ミラは力んでいた肩の力を抜いた。
一つ前を読む 小説の部屋へ戻る 次を読む
|