卵のつがい



第三章

19



「そういえばイースもモモンガ飼ってたんだってな」


 旅の途中で立ち寄った薬草店の子供、

フィットのことでも思い出したのだろう。

モモンガを保護し観察している自分たちにとって、

モモンガに親しみを感じてくれている人間ほど

嬉しい存在はいない。だからだろう。

エポックは瞳を輝かせ、イースへ視線を向けた。

しかしイースのほうはなぜか驚いたように目を丸くする。


「え、どうして」


 ミラは戸惑った様子でまばたきを繰り返すイースのことを

そっと見つめた。


(イースは優しいから断れなかったんだわ)


 早く案内役から解放してあげなくては。

ミラが内心で決意していると、

エポック矢継ぎ早にイースへ疑問を投げかけていた。


「やっぱりこの森で拾ったのか?」

「え、ああ、この森で薬草を採取した帰りに見つけたんだ」


 興味津々とばかりに詰め寄るエポックに、

イースは苦笑しながらも律儀に返答している。


「へー、じゃあますますこの森にモモンガいる可能性は

高くなったな」


 エポックが嬉しそうにこちらを見てくる。

しかし案内役をやめさせる方法を考えていたためミラは、

うわの空で彼の話を聞いていた。










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