卵のつがい
第一章
1−5
「ちょっとあんたのせいで全然休めなかったじゃないのー」
ひょうひょうと逃げ出したエポックへ怒りをぶつけることもでき
ず。ミラは叫びながらも読んでいた手紙を丁寧に封筒の中へ戻し、
箱の中へ入れた。
(もうすぐイースに会えるんだ)
以前から、モモンガたちがモモグの森とは別の場所で生息してい
るという話がまことしやかに囁かれていた。考えられることとして
は、乱獲されたあと逃げ出した個体が別の場所で根付いたという可
能性。あるいはモモグの森にいるモモンガが自主的に移動したとい
う可能性など会議の中であげられた。そんな中、理由はどうであれ
モモグの森以外にモモンガが生息しているのならば、その分布を調
べておいたほうがいいのでないか、という話になった。手始めに王
都近郊にある森から調べることとなり、選抜された数名で今向かっ
ているというわけだ。
(どんな顔するかな? やっぱり驚くかしら)
想像するだけで楽しくなってくる。クスクス笑いながら、手紙が
入った箱を撫でているとエポックに呼ばれた。
「ミラー! いつまでにやにやしてるんだー! 出発するぞー!」
「に、にやにやなんてしてないってば!」
これ以上からかいのネタを提供する必要はない。ミラは急ぎ、箱
をリュックの中へしまい集合場所へと向かった。
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