卵のつがい
第三章
21
※ ※ ※
「エルとイースの案内のおかげで予定よりも早く
モモンガの痕跡を見つけることができた」
ピックスの声が辺りに響き渡る。
あのあと駆け寄った先で見たものは、
ナーブの幹につけられていたモモンガの爪痕だった。
きっと近くに巣があるはずだ、と
周囲を慎重に調査したが残念ながら巣を発見することは
できなかった。
しかしながら、巣以外にモモンガの糞や毛など見つけることが
できた。
このことから近くにモモンガの巣があることは間違いないだろうと
推測し、昼の探索を終了させ村へ帰ってきたのである。
幸先のいい発見にピックスを含め同僚たちの表情も明るい。
しかし、ミラはそんな彼らとは裏腹に足取りも重く村へ戻った。
(どうしよう。イースに謝りたいのに……)
探索中何度もイースに声をかけようと腕を伸ばしたが、
うまくいかなかった。
たぶんさっき目を逸らされてしまったことが
尾を引いているのだろう。
話しかけようと口を開くたび喉に何か詰まったような苦しさを感じ、
声を出せなかったのである。
(ピックスの話が終わったら絶対に謝ろう)
勉強の邪魔をしてしまってごめんなさい、と。
そして許してもらおう。イースならきっと許してくれる。
ミラは解散を告げるピックスの言葉を今かいまかと待ちわびた。
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