卵のつがい



第四章





「あたしイースのこと何にも知らないのね……」


 自分とイースとでは住む世界が違うのかもしれない。

このまま何も言わずに村へ帰ったほうが

お互いのためになるのではないだろうか。

そんな不安から漏れた呟きを

エポックが払拭するように口を開いた。


「そんなのこれから知っていけばいいじゃねーか。

んなことよりとりあえず中に入ってみようぜ」

「え、ちょ、エポック勝手に中に入っていいの?」


 その度胸はどこからくるのか。

無謀ともいえる幼馴染みの行動に唖然するとともに

ミラはさっさと歩き出すエポックを追いかけた。


「別に平気だろう。一般人にも開放してるみたいだぞ」


 ほれ、と言ってエポックが指差すほうを見る。

石畳の両端に敷かれた芝生の上で

駆け回っている子供たちの姿あった。


「さて、それよりもどうやって探すかなー」


 エポックがきょろきょろあたりを見回すと、

背後から声をかけられる。


「どうしました?」

「おっ、良かった。困ってたん……」


 意気揚々と振り返ったエポックが、

話しかけてきた相手を見た瞬間

直立不動のまま動かなくなった。










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