卵のつがい
第四章
2
「あたしイースのこと何にも知らないのね……」
自分とイースとでは住む世界が違うのかもしれない。
このまま何も言わずに村へ帰ったほうが
お互いのためになるのではないだろうか。
そんな不安から漏れた呟きを
エポックが払拭するように口を開いた。
「そんなのこれから知っていけばいいじゃねーか。
んなことよりとりあえず中に入ってみようぜ」
「え、ちょ、エポック勝手に中に入っていいの?」
その度胸はどこからくるのか。
無謀ともいえる幼馴染みの行動に唖然するとともに
ミラはさっさと歩き出すエポックを追いかけた。
「別に平気だろう。一般人にも開放してるみたいだぞ」
ほれ、と言ってエポックが指差すほうを見る。
石畳の両端に敷かれた芝生の上で
駆け回っている子供たちの姿あった。
「さて、それよりもどうやって探すかなー」
エポックがきょろきょろあたりを見回すと、
背後から声をかけられる。
「どうしました?」
「おっ、良かった。困ってたん……」
意気揚々と振り返ったエポックが、
話しかけてきた相手を見た瞬間
直立不動のまま動かなくなった。
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