卵のつがい



第四章





※※※



「丘ってここのことよねー?」


 少女に言われたとおりに歩くこと数分。

すぐに見つけることはできたが、肝心のイースの姿は見当たらない。

行き違いになってしまったのだろうか。

不安になりながら、キョロキョロ見渡しているうちに

頂上へ着いてしまった。

そんなに急こう配を登ったわけでもないのに、

眼下にこんもりとした緑が生い茂っている。


「わぁー。すごい! あれがアラバの森かしら?」


 眺めの良さに感嘆の声をあげているときだった。

背後から草を踏む音とともに聞き覚えのある

柔らかな声が聞こえてくる。


「ミラ?」

「……イース」


 振り返ると、

探し求めていた人が驚いた様子でこちらを見ていた。


「なんで……」


 こちらを認識したとたんイースは眉をひそめる。

ミラは怖気づきそうになる気持ちを、

ギュッと手を握りしめることで気づかないふりをした。


「あ、あのあたし謝りたくて」


 声を震わしながらもなんとか言葉を紡ぐ。

しかし、素っ気ない態度のイースによって

最後まで口にする前に遮られてしまった。










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