卵のつがい



第四章

12



※※※



「え! じゃああの場所にココアが眠っているお墓があるの?」


 気持ちが通じあったことが夢のようで、どこかふわふわしている。

それがイースの言葉で吹き飛んだ。

ミラは下り坂も気にせず、隣を歩くイースへ顔を向けた。


「うん。だから何かあるとついつい行っちゃうんだよね」


 情けないよね、と後頭部をなでながら苦笑するイースに

ミラは首を横に振る。

いっときは医師になる夢を諦めるほど大切にしていたモモンガだ。

イースと出会えたことだってココアのおかげである。

だから自分にとってもココアは大切な存在だった。

それなのにそんな大事なことを学園へ戻る途中で言われ、

ミラはイースを恨みがましく睨みつけた。


「もう! そういう大事なことは早く言ってよ。

あたしもココアに挨拶したかったのにー。

ねぇ、今から戻りましょうよ」

「また今度一緒に行こう。

それにエポックさんを待たせるのも悪いだろう?」


 嬉しそうに笑うイースの眼差しにドクリと胸が高鳴る。


(やだ、どうしよう。

イースがすごくかっこよく見えちゃう……)


 イースの眼鏡の奥にある黒い瞳に見つめられると、

囚われたように動けなくなる。

それに比例するかのように、体温が上昇していくのがわかった。

ミラは恥ずかしくなり、誤魔化すように悪態をついた。










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