卵のつがい
第四章
14
「それで見とれちゃって動けなくなったエポックの代わりに、
あたしがグランちゃんの隣にいた、
運動ができて爽やかそうな青年と話したのよ」
身振り手振りを加えながら説明していると
イースの黒い瞳が丸くなる。
「グランちゃん……」
「え? やっぱり『ちゃん』づけなんて慣れ慣れしいかしら?」
イースだけしか聞いていないとはいえ、
『ちゃん』づけにしてしまったのはまずかったのだろうか。
自分よりもはるかに年下そうに見えたが、
医師になろうと勉強している人たちだ。
もしかしたらプライドを傷つけてしまうのかもしれない。
しかしイースの返答はこちらの考えとは逆のものだった。
「いや、うーん。呼び捨てのほうが嬉しいんじゃないかなー?」
深く考えすぎていたらしい。
少し肩透かしをくらったような気分になったが、
ミラはそのまま話を続ける。
「そう? あ、そういえばそのときグランちゃんがあたしの名前を
知っていたからすごく驚いちゃった」
初対面の相手に名前を言い当てられた衝撃を口にすると、
イースが思い当たることがあるといわんばかりに頷いた。
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