卵のつがい
第一章
1−8
「そうだった薬草屋さんに行くんだった! エポック、今日はここ
に泊まるのよね?」
「あぁ。とりあえず初日だし、この町で一泊して明日早朝に出発す
るって会議で話しただろう」
「わかったわ。ありがとう。それじゃ、あたし行くわね」
「って、ミラ! お前、宿の……」
ミラはエポックの言葉を最後まで聞くことなく、その場から走り
去る。目指す場所は前回プレオの怪我でお世話になったフィット親
子たちの営む薬草店だ。
(プレオも連れてこられたらよかったのになー)
初めての旅ということもあり、プレオは家で母と共に留守番をし
ている。自分のことで精いっぱいなのにプレオの面倒までは見られ
ないだろう。そう判断したのだ。イースへ元気になったプレオの姿
を見せたかったがこればかりは仕方がない。誘惑されそうな香しい
匂いを放つ屋台から逃れるべく、ミラは家に置いてきたプレオのこ
とに思い馳せていた。
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