「ねえ、『魔法使い』さん。あなた、神さまを信じてる?」

「……ああ……、信じてるよ」

「あなたの信じる神さまがどういうものかは知らないけど、わたしはね。

この世に万能なんて存在し得ないように、神さまだって万能じゃないと思うの」

 そう告げて彼女は微笑み、空を仰ぎ見てふと目を細めた。

つられて見上げたその先には、黄金色に染まった銀杏の葉の群れがある。

「ただ見守るだけの神さまだっているはずよ。この木のようにね」

 穏やかな風が流れ、二人は沈黙した。


 何事も、崩れるのは一瞬なのだ、と思った。

それまではずっと、信じていたのだ。

すべては、終わったのだと。

心から……。






 遠い昔、一人の少年は2つの罪を犯した。

罪を犯した少年はのちに相応の報いを受け、その生涯を終えた。

 否、そのはずだった。

少年は死の直前、一瞬のうちに廃墟と化した街の中で、

一人佇む幼い子供を目にしたのである。

少年はその子供と一つの約束を交わし、息絶えた。

それは普通なら、到底叶うはずないものであった。

けれど子供は一心にこれを信じ、少年はこれを願った。

 結果、想いはやがて天へと届き、

願いはめでたく成就することとなった。

 少なくとも、少年はそう信じていた。

だが、現世へと再び舞い戻った少年は、

己が産み落とされた際、その身が女の赤子へと変化していることに、

はや気がついていた。

少年、いや、『アルマ』と名付けられた女児には、

生まれた瞬間からありとあらゆる知識と記憶が備わっていたからだ。

とはいえ『彼』はまだ、

「生まれ変わる」ということの本当の意味を知らずにいた。











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