まどろみの向こう側IC
「あるわけない……か……。
そうよね、そもそも本当であるはずもないんだから……」
その語尾はまるで半分が独り言であるかのように、
徐々に小さく掠れていった。
『ジョーイ』は消えてしまった言葉を追うように視線を上げ、
エマを見つめる。
こちらの視線を受け流し、彼女は黙って空を見上げた。
秋の日差しがエマの顔面を照らし、眩しいのか目を細める。
注ぎ込む陽光を遮るように片手を翳しながら、
ぽつりぽつりと語りだした。
「わたしね、ずっとずっと彼に会うことが夢だったのよ。
寝物語に聴かされた昔話の、
その真実を知りたいっていつも思ってたわ」
「昔、話……?」
眉根を寄せ囁くように問いかける『ジョーイ』に、エマが頷く。
「どんな話?」
「ある幼い少年が魔法使いのお兄さんに出会って、
幸せになるってお話」
微笑みとともに紡ぎだされた言葉を
『ジョーイ』は無表情で受けとめた。
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