まどろみの向こう側IE


 まさか自分の妹があの惨劇の中で無事生き残っていたとは。

それにも増して妹があの子供と出会い、まさか家庭を持っていようとは。


(キャシー……)


『ジョーイ』は内心で呻く。

 まったく思いもよらぬことだ。

目の前の女性はあの子供の血縁であり、そして……。

妹の、いや、つまりは自分の血縁でもあるというのか。

『ジョーイ』は息を詰めてエマの横顔を見つめる。

だが、エマがこちらのそんな様子を気付くことはなく、

彼女はただ小さく肩を竦めた。

「実はこの話、まだ続きがあってね。

少年は大人になってその女性と結婚した後も

ずっと魔法使いとの約束を忘れずに守り続けている、っていうの。

だから物語の終りはいつもこう。

『彼は長い間待ち続けている。大きな銀杏の木の下で、

気の遠くなるほどの長い時をずっと……』ってね」

 『ジョーイ』はエマの言葉に対し、なんと答えるべきか迷う。

真実を告げるべきだろうか。

自分がその関係者である、と。

決心がつかぬまま無言のままでいるうちにも、エマの話は続いていた。











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