まどろみの向こう側IG


「そう。興味。

別に意識してたつもりはないんだけど……。

ねえ、知ってる? この黒い建物が、元は教会だって話」

『ジョーイ』は内心の動揺を抑えつつ頭を振ると、

エマが溜め息をついてゆっくりと立ち上がった。

「私たちが生まれるずっとずっと昔のことよ。

その頃この街は小さいけれど一つの国で、

彼らは独自の文明を持っていたの。

彼らは魔術と呼ばれるものを信じていて、

実際にそれを用いることで繁栄もしていたんだそうよ。

ほとんど伝説級な話で具体的なことは何も分からないけれど、

そういう類の動力源があったことは確かね。

そして彼らは、その力に驕っていた。

それが原因かは不明だけれど、

ある時隣国との間で戦争を起こったの。

そこで彼らは自分たちの持つ力を最大限に行使するために、

まだ未熟で制御力も乏しい子供を利用することを思い立った。

そしてそれは即座に実行に移され、見事に成功した。

でも、そのおかげで、一瞬にしてすべてが無に帰したの。

残ったのはこの黒い塔と、そこに建ってる銀杏の木だけ」

 塔の階段を一段ずつ確かめるように降りながら、

エマが半ば夢見るような口調で言葉を紡ぐ。

「私は知りたくなったの。大昔にここに暮していた人々が、

私の祖先でもある人たちが、

いったいどんな文明を持ちどんなことを考え生きてきたか。

そして何より、その時何が起こったのか。その真実を」

 『ジョーイ』はそんな彼女の声に、ただ黙って耳を傾ける。

その問いに答えることなど今の自分にはできようはずもなく、

唇をかみ締めながら己の足元を見つめ続けた。











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