まどろみの向こう側IH
「だから私は会いに来たの。
その時の記憶を鮮明に覚えていて、
ただ1人大切に大切に守っている私の血縁に。
でも……」
エマが階段を下る歩みを止め振り返る。
「なんだかどうでもよくなっちゃったのよね」
エマが破顔した。
「大学の休みを利用してこの身一つで一人旅、
って洒落込んではみたけど。
ここに着いたら肝心の伯父さんはもうお墓の下で。
お墓の隣りには枯れていたはずの銀杏の木が健在で。
それを見てたら、なんだかそういうことに拘ってる自分が
ものすごくちっぽけに見えちゃったのよ」
くすくすと肩を揺らしつつ、エマが手を差しだしてきた。
『ジョーイ』はその手を凝視し、ただ首を左右に振る。
エマが溜め息を吐き、
それから所在なさげに両腕を軽く腰にあてた。
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