まどろみの向こう側G


 家を出た後の行き先はすでに決まっていた。

教会の向かいにある黒々とした塔である。

その階段に座り込み、隣りにそびえ立つ銀杏の大木と

根元にある墓標を日暮まで眺めるのだ。

近頃『ジョーイ』の日課と言えばいつもこれで、

ろくに子供たちと遊びもしない自分を大人たちは一様に訝しがった。

最初の頃はもっと子供らしくしろと叱りつける者もあった。

だが、それでもいっこうに止めようとはしない少女の頑なな態度に閉口したのか、

このごろは声を掛ける者さえいない。

以前、同じ場所にいた

変わり者のじいさんの後継者とでも思うことにしたのだろう。

顔を顰め、ため息混じりで遠巻きに眺めやるだけである。

 いずれにしても『ジョーイ』はいつものように、

街一番と評判のパン屋の角を曲がった。

愛想はいいが噂好きな女主人のいる肉屋の横を抜け、

噴水のある広場へと向かう。

だがそこで目にしたのは、いつもと変わらぬ黄金色の銀杏の巨木と、

その木陰に佇む見知らぬ女性の姿だった。











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