blind

 

 

 

 

ねえ、大佐。

あんたとは散々夜を共にしてきたけど。
いつも、どこか、引っかかるものを感じてた。
目を閉じて、苦痛に顔を歪めて、一心不乱に快楽を手繰り寄せようとする姿に。

それが悲しいっていう感情だってことに、最近やっと気付き始めたんだ。

いや、悲しいっていうか、寂しいのかもしれない。

すっかりあんたの懐に入った気になっていたのに、本当はもうひとつドアがあって。
そのドアは重く固く閉ざされていて、俺がどんなにぶち当たっても破れなくて。
ふたりっきりの空間で、からだはひとつに繋がってるのに。
いつも、ずっと、ひとりぼっちのような気がして。

悲しくて、寂しくて、苦しくて、イラつく。

 

深く入り込んだままの体勢でわざと動きを止めると、不満げな溜息が漏れ出す。

「ねえ、本当は、俺なんかとヤるの、俺なんかに突っ込まれてんの、嫌なんでしょう」

荒い息の中で、うっすらと開かれた瞼の奥は、熱っぽくどんよりと潤んでいる。

「だからずっとそうやって目、閉じたまんまなんじゃないの」

ぐるりと彷徨った瞳は、こちらへ向けられることなく、ただ宙を凝視しているようで。

「自分がさ、男に、しかも部下にヤられてるって現実を見たくないとか」

こんなこと言っても怒るでもなく、視線すら寄越してももらえない。
その程度の存在なんですか、あんたにとって俺は。

「やっぱり、女とヤってるほうが気持ちいいんじゃねえの、あんただって男な、…」

腹立ち紛れの言葉を遮るように、熱く柔らかい内部が蠢いて。
中途半端で不恰好なまんまの俺自身を締め上げてくる。
不意を衝かれて思わず身を固くすると、ふん、と鼻で笑う横顔。

クソ、余裕かましやがって、この野郎。

ますますイライラが募った俺は、目の前で揺れてたあんた自身を強く握り込んだ。
んっ、と呻く声がして、腹筋にくっと力が入って、また中の俺を締め付ける。
こんなことだって、もう過ぎるくらいに感じてるんだろう。
でもまだ早い。そんなに簡単にイかしてやらねえから。

そのまま、さっきより強く乱暴に抜き挿しを繰り返す。
力任せなセックス。まるでただヤりたい盛りのガキ。
突き上げるたびに零れ出す声が、だんだんと艶を帯びていく。

 

本当は、わかってる。

あんたが全身で俺を受け止めて俺を感じて、俺を愛してくれていること。
からだではこんなにも感じてる。痛いほど感じてる。
泣いて喚いて走り出したいくらいに。
だからこそ、からだ以外の確証が欲しい。
こころでもしっかり繋がってるって、いつでもどこにいても感じられるしるしが。
欲しくて欲しくてたまらないんですよ。

それが何だと訊かれても、俺自身、正直よくわからない。

でもきっとそれは、あの重く固く閉ざされたドアの向こうにあるに違いない。

 

ああ畜生、自分の青臭さがこうも鼻につくとは。
青臭い上にガキ臭くて。何やってんだ、俺。

 

実際、俺は気が触れちまったんだろうかと思うときがある。

あんたを知ってから。
あんたしか抱けなくなってから。
あんた以外愛せなくなってから。

いっそ気でも何でも触れてしまえばいいんだ。俺も、あんたも。
ずっと一緒にいて、からだを擦りつけ合って欲望を吐き出し合って。
もう四六時中互いのことしか考えられなくなって。
もう互いの匂いしか嗅ぎ分けられなくなるくらいに。

ねえ、もう二度と外にも出ないで仕事もしないでメシも食わないでいようよ。
ただただセックスしまくって、カラカラに干乾びて死んじゃおうよ、ふたりでさ。

なんてことを真顔で言い出しそうになるくらい、あんたのこと好きで好きでたまらなくて。
やっぱり俺、もうとっくにおかしくなっちまったんだ。

 

ねえ、だから頼むよ大佐。目を開けて俺を見て。

 

熟して蕩けた深奥がうねって、弾けそうな熱が俺の手の中でもがいている。
上擦って切なさを増す喘ぎ声で、そのときが近いとわかる。
あんたの奥底に沈んだ俺を、天辺まで引き上げてくれるときが。

もうすぐ、そこまできている。

強く握り込まれたままの自身を、なんとかして解き放とうと。
熱く濡れたあんたの手が、俺の手に重なって。
必死で引き剥がそうとする指は、汗でぬめって空回りするだけで。

もどかしく這い回る爪が、俺の手の甲に食い込む。
チクリと刺す痛みにも、もうどうしようもなく煽られて。
強張り始めた手を掴んで、自身の熱に触れさせてやる。
震える指に手を添えて、俺は奥を穿つ腰に力を込めた。

愛している。愛している。愛している。
いくら言葉にしても足りることのない想いを、無我夢中で叩きつける。
何度も。何度も。何度も。

 

ああ、あんたが今、俺を真っ直ぐ見つめてくれてたら。
どんなにか、俺は。

 

一段と高く引き攣れた声音が、一瞬ぐっと息を詰めてそのときを告げると、
重なり合った手の中で、あんたの熱が弾けとんだ。

俺の内を暴れまわっていた快感が、一気に脳天を突き抜けてスパークする。
目の前が真っ白になって、もう何も考えられなくなって。

やがて、すべてを吐き出した安堵感に、からだはゆっくりと支配されていく。
ふたり分の快楽が残していった余韻を、思う存分味わいながら。

 

でも、なんか、変だ。

一面真っ暗で、何も見えない。

目の前にいるはずの、あんたの顔もからだも。
しっとりと濡れて艶めく黒髪も、うっすらと火照りを残す白い肌も。

どこにいたって、何してたって、俺があんたを見失うはずなんかないのに。
あんたを求めて伸ばしかけた、この手さえ見えない。

頭だけじゃなくて、とうとう目までおかしくなっちまったんだろうか。

信じられない思いで俺は、震える手で両目の在り処を確かめる。
眼球を弄る指先がここでもまた、重く固く閉ざされたドアに触れた。

 

ああ、そうか。

 

俺も、目を閉じていたんだ、ずっと。

 

 

 

 

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13/AUG/06
ハボロイ

ハボロイの日&ハボックの日記念。ひとりぐるぐると、己が尻尾を追い回す犬。
愛に溢れたハボロイを目指したのに、またまた薄ら寒く…。
ホントごめんなさいこんな痛〜いハボロイばっかりで。

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