temperature
ときどき、ただ無性に抱きしめたくなる。
すべてを背負い込んでしまうその肩を、
歯を食いしばって堪えるその涙ごと。
でも、いくら包み込んだところで、
僕のからだは冷たさしか与えない。
どうしようもない悲しみに震える背中を
きっともっと凍えさせてしまうようで。
だから僕はもうずいぶんと長い間、
兄さんの体温に触れていない。
でもね、不思議なんだけど。
兄さんの機械鎧の手が僕に触れる時、
僕を小突く時、僕をからかってひっぱたく時、
僕の肩に置かれる時、僕の頭を撫でる時、
なんだかね、ほわっと、あったかいんだよ。
ほんとに、変だよね。
触れ合うのは、お互いに熱を持たない、
温もりが篭ることも残ることもない、
ただ温度を移し取って奪い取るだけの
金属の部品の寄せ集めなのにさ。
硬質な音を立てて重なる度に、
冷たさだけを交換するその瞬間に、
なんだって、こんなに、あったかいんだろう。
もしかしたら、こんな奇妙な感覚こそが、
僕がまだこの世に繋がれている証拠なのかな。
兄さんと同じ血と肉と骨を受け継いだという記憶が、
僕のたましいから零れ落ちてしまわないないように、
僕のこころが起こしている錯覚なのかな。
もしそうだとしたら、
ぜんぜん不思議でも、変でもないよね。
たとえ、現実にはありえない感覚だとしても、
それは僕が正真正銘の僕であると、
この身に伝えてくれるたった一つの温度なんだ。
だからね、兄さん、
もう、なんでもひとりで抱え込むのはやめてよ。
苦しいとか辛いとか、素直に言っていいよ。
こころに纏わりついて離れないその熱を、
鋼のからだだけが感じ取れるその温度を、
僕らの罪と命の証を、もっと僕に分け与えて。
**********
03/2/05
アル独白(…え?)
「からだではなくこころで感じる温度」
鎧のからだと機械鎧の手足は、母への思慕の念から犯した罪の象徴。
でもその象徴から彼らが感じるものが、なにか他にもあるような気がして。
先日、師匠のお宅の絵茶で、アルの話題で盛り上がった余韻が、
私の煩悩の中で化学変化を起こして出来上がった代物です。
師匠、ならびにAさま、感謝です!
はい、ここはハボロイ及び軍部の皆様大好きサイトです。
でも、エドもアルもウィンリイも大好きな管理人でございます。
バカップルと同じく、ときどきこうして思いついてしまうネタが、
私にとってのトランキライザーのようなものでございます。