最新情報⇒医療法人(旧制度)申請ラストチャンス 18年8/25更新

    どうなる一人医療法人

 

 平成18年度医療法改正 医療法人制度が大幅に変更

 

厚生労働省は、来年度に予定される第5次医療法改正の具体的方向を徐々に打ち出してきている。平成12年の第4次医療法改正では、病床の一般病床と療養病床との区分けが大きなテーマであった。この数年で、厚生労働省が迫った急性期型なのか療養型なのか、決断がつきかねているうちに経営を極端に悪化させた中小の有床診療所・中小病院もかなりの数あると聞く。そして、来年の第5次改正である。医療提供体制(医療計画の見直し、医師の偏在解消など)の整備が一方の柱であるが、いま一方の柱は、医療法人制度改革である。

その医療法人制度改革の全貌が、17722日の「医療経営の非営利性等に関する検討会」の報告としてまとめられたものが、このほどあきらかとなった。

 

法人解散時の残余財産は国等に帰属.

 

その「報告」によると、今後設立認可される医療法人は、公益性の高い医療法人と一般の医療法人とするが、この一般の医療法人に関しても現状よりは格段と厳しい「非営利性」が求められる。その最たるものが、残余財産の帰属の問題である。現状、医療法人は、その定款にその法人が解散した場合の残余財産を誰に帰属させるが定めることとなっており、一人医療法人であれば、一般に「出資者に出資額に応じて返還する」旨規定してあるので、院長に帰属することになる。ところが、改正案では「国、地方公共団体または他の医療法人に帰属させること」となるという。

 

全国の歯科の一人医療法人は64千以上

 

診療所の数は年々増加しているが、平成173月現在、一般診療所98千、歯科診療所68千が全国にはある。そのうち、医科は、2万6千6百、歯科は6千4百がいわゆる一人医療法人である。歯科診療所は(おそらく収入上位1割である全体の)1割が一人医療法人ということになる。そのすべてが、昭和の終わりからこの20年近くの間に設立されている。後継問題や、分院開設といった経営上の理由や節税対策など、設立の動機はさまざまあろうが、いずれにしても、院長が自分の力と金で診療所経営をしてきたのであって、「残余財産が国等に帰属する」のは青天の霹靂であろう。

「検討会」の報告では、「当分の間、経過措置を設け、既に設立されている医療法人の経営に支障がないよう配慮」と但し書きがあって、この「当分の間」がいったい、どのくらいの期間なのか、はっきりしない。数年間で、この経過措置が廃止されると見るむきも多いが、筆者は、ズバリ、「半永久的」と見る。つまり、旧制度下で設立認可されたひとり医療法人については今までどおりの扱いとする、のが行政と医師会側の暗黙の了解とみる。

結局、医療法人は、法改正以降、新設のものは①公益性の高い医療法人②出資限度額の医療法人と、法改正前の③医療法人(大半は一人医療法人)の3種類の医療法人になっていくと思われる。

 

一人医療法人のとるべき対応策

 

この医療法人制度改革の問題は、今後大きな波紋を呼ぶことであろう。しばらくは、ゆり戻し、修正も含めた攻防が続き、来春、医療法改正案が国会上程される。それゆえ、実際に施行されるのは、1年以上は先になる。そこで、今現在、一人医療法人を経営されている先生の対策になるが、とりあえず静観するより他ないであろう。今回の厚生労働省の改正案を軸に、財務省サイドでは税制上の取り扱いの検討に入るので、まだ全体像がはっきりしていない。また、医療法人を解散して、個人事業に戻る場合、医療法人としての清算所得、理事長=院長先生個人の配当所得がそれぞれ生じ、法人に利益が留保されている場合、大きな課税所得となる可能性が出てくる。解散のタイミングや退職金の支払いの問題も含め細かな試算が必要となろう。

 

かけこみ医療法人の道は

 

一方、今現在、個人事業の形態をとられていて、医療法人化を検討(事業展開上、節税対策上)されてきたところはどうすれば良いだろうか。ズバリ、急いで法人設立を、というのが筆者のアドバイスだ。先行き不透明な医療法人化を急ぐのは矛盾しているようだが、はっきり言って、いったん改正されれば今までのような医療法人は認められなくなるのは確実である。残されている時間は少ない。各都道府県により異なるが、認可の手続き受付は旧制度ではあと2回あるかどうかではないだろうか。ここが思案のしどころである。