第二章のはじまり

1995年1月
報道各社は同じ場面を映し出し、

何事が起きたのか容易には理解できぬ光景が、一面を覆う。

阪神淡路大震災である。

奇しくも二輪駆動車COMAの発売予定日であった。

元来、コンペモデルから始まったこの企画、

開発半ばで、科学技術省傘下である、

新技術開発財団の助成金制度に合格した。

その審査基準を満たすため、

荒地走行を容易にする目的の、

ナンバー取得車両に変身する事になった。

しかし、このタイミングでの大震災。

弱小の我々には、痛手以外のなにものでもない。

すべての計画は止まった。


それから16年、

COMAに封印をしたものの、計画を諦めることはなかった。

1年、1年力をつけ、時を感じ、再度計画をスタートさせた。

機動力も3割向上させ、量産計画を見据えた試作開発に着手した。

と、そのとき、自らも体感する東日本大震災が起こった。

産みの苦しみは、今まで幾度となく味わってきたが、

COMAほどのものはないであろう。

しかし、前回の震災からの教訓を踏まえ、自力もつけた。

今度は歩みを止めない。

やり通す。


そして、2013年10月。

初代で認められた、荒地走行機能を、

さらに、細部までまとめあげ、3割向上させた機動力も、

従来通りの、遠心クラッチタイプを採用した。

また、再利用可能な素材を、極力使用し、

環境配慮とともに、

次世代から、未来までも、その姿を残す努力を加え、

発表に至った。

まだまだ二輪駆動車の認知度は低い。

共に成長しなければならない。

20世紀に始まったこの計画が、世紀を跨ぎ成長し

二度の大震災も乗り越え、次世代に受け継がれていく。

初代から2代目とカタチを変え、

残す。人と共に。

今回この計画の一部をあえて伝えることで、

後継者たちにやりきる勇気と、

決して諦めない、強い気持ちを持ち続けてほしい。


夢を叶えるのにゴールなどない。

歩みを止めずに進んでほしい。








池 田 時 広





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