3.排出規制と削減対策



 a.排出規制と環境基準について
 b.ダイオキシン類の削減対策について


a.排出規制と環境基準について


 ダイオキシン類対策特別措置法などの基準値及び規制の要点以下にまとめた。


 排出ガス及び排出水に関する規制

  ・ 特定施設の設置、構造などの変更時における都道府県知事への届出義務
  ・ 毎年1回以上のダイオキシン類濃度の測定(排ガス、排水、ばいじんなど)
  ・ 測定結果の都道府県知事への報告


 その他の規制

  ・ ばいじん、燃え殻などを特別管理廃棄物に指定し、ダイオキシン類の低減処理を義務付ける
  ・ 廃棄物の最終処分場について、ばいじん・燃え殻などの飛散・流出防止措置を具体化
  ・ 廃棄物の最終処分場について、ばいじん・燃え殻などの維持管理基準を策定
  ・ 対策地域における汚染土壌の除去などの実施


 ■排ガスに係る排出基準値(単位:ng-TEQ/m3
特定施設の種類焼却炉の焼却能力新設施設基準既設施設基準
H13.1.15〜H14.11.30
H14.12.1
廃棄物焼却炉
(焼却炉能力が合計50s/時以上)
4t/時以上
0.1
80
※H10.12.1より適用
1
2t/時〜4t/時
1
5
2t/時未満
5
10
製鋼用電気炉
0.5
20
5
鉄鋼業焼結施設
0.1
2
1
亜鉛回収施設
1
40
10
アルミニウム合金製造施設
1
20
5
・廃棄物焼却炉(焼却能力200s/時(ただし、廃プラスチック類焼却施設の場合は100s/d)以上)及び
  製鋼用電気炉については既に規制対象となっているが、焼却能力50kg/時以上200s/時未満の施設
  については、平成13年1月15日から適用。




 ■排水に係る排出基準値(単位:pg-TEQ/L)
特定施設の種類新設施設
排出基準
既設施設
排出基準
硫酸塩パルプ(クラフトパルプ)又は亜硫酸パルプの製造用に供する塩素又は塩素化合物による漂白施設
廃PCBなど又はPCB処理物の分解施設
PCB汚染物又はPCB処理物の洗浄施設
硫酸カリウムの製造用 排ガス洗浄施設
カプロタクラム製造用施設(塩化ニトロシルを使用するものに限る)に係る硫酸濃縮施設、シクロヘキサン分離施設、排ガス洗浄施設
クロロベンゼン又はジクロロベンゼンの製造用施設に係る水洗施設、排ガス洗浄施設
カーバイド法アセチレンの製造の用に供するアセチレン洗浄施設
アルミナ繊維の製造の用に供する施設のうち、廃ガス洗浄施設
8・18-ジクロロ-5・15-ジエチル-5・15-ジヒドロジインドロ[3・2-b:3'・2'-m]トリフェノジオキサジン(別名ジオキサジンバイオレット)の製造の用に供する施設のうち、次に掲げるもの
 イ ニトロ化誘導体分離施設及び還元誘導体分離施設
 ロ ニトロ化誘導体洗浄施設及び還元誘導体洗浄施設
 ハ ジオキサジンバイオレット洗浄施設
 ニ 熱風乾燥施設
亜鉛の回収(製鋼の用に供する電気炉から発生するばいじんであって、集じん機により集められたものからの亜鉛の回収に限る。
 イ 精製施設
 ロ 廃ガス洗浄施設
 ハ 湿式集じん施設
10
10
アルミニウム又はその合金の製造のように供する焙焼炉、溶解炉又は乾燥炉に係る排ガス洗浄施設、湿式集じん施設
塩化ビニルモノマーの製造の用に供する二塩化エチレン洗浄施設
10
(20)
一般廃棄物焼却炉施設の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設、汚水又は廃液を排出する灰の貯留施設(焼却能力50kg/時以上のものにかぎる)
産業廃棄物焼却施設の廃ガス洗浄施設、湿式集じん施設、汚水又は廃液を排出する灰の貯留施設(焼却能力50kg/時以上のものに限る)
10
(50)
上記の施設から排出される下水を処理する下水道終末処理施設
上記の施設を設置する事業場から排出される水の処理施設
10
・既設施設については、平成13年1月15日から適用  ・(  )内は法の施行後3年間適用する暫定的な水質排出基準
・廃棄物の最終処分場からの放流水に係る基準については、最終処分場の維持管理基準を定める命令により10pg-TEQ/Lと規定
印の施設は平成13年12月1日から適用  ・印の施設は平成14年8月15日から適用




 ■廃棄物焼却炉から排出されるばいじん等の基準値(単位:ng-TEQ/g)
ばいじん等(ばいじん、焼却灰、燃え殻、汚泥など)
3




 ■環境基準とダイオキシン類耐容一日摂取量(TDI)
環境基準環境大気
0.6(年平均)
pg-TEQ/m3以下平成11年12月27日 環境省告示68号
水質
1(年平均)
pg-TEQ/L以下平成11年12月27日 環境省告示68号
土壌
1000
pg-TEQ/g以下平成11年12月27日 環境省告示68号
底質
150
pg-TEQ/g以下平成14年 7月22日 環境省告示46号
(H14.9.1より施行)
ダイオキシン類耐容一日摂取量
(TDI:Tolerable Daily Intake)
4
pg-TEQ/kg・d平成11年6月 中央環境審議会
・土壌は環境基準を達成しても、250pg-TEQ/g以上の場合には、必要な調査を実施すること






b.ダイオキシン類の削減対策について


 ここでは、平成9年1月出された「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン−ダイオキシン類削減プログラム−」を下に、既設及び新設ごみ焼却施設に係るダイオキシン類の削減対策と焼却灰・飛灰のダイオキシン類の削減対策及び最終処分場における対策として浸出水中のダイオキシン類の除去分解技術について表にまとめることにした。



1.既設及び新設ごみ焼却施設に係るダイオキシン類の削減対策
 ■既設ごみ焼却施設に係る対策
施設運営
適正負荷ゴミ質の均一化、適正負荷運転
連続運転の長期化
定期測定の励行年に1回のDXN類濃度測定
燃焼設備
燃焼温度800℃以上(850℃以上の維持が望ましい)
CO濃度50ppm以下(O12%換算値の4時間平均値)
完全燃焼500ppmをCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない(5回)
ガス冷却設備
廃熱回収ボイラ
(全連続炉のみ)
ボイラ伝熱面上のダスト堆積を抑制
ボイラ出口排ガス温度の低温化
炉頂型ガス冷却室の改造
空気予熱器空気予熱器内のダスト堆積を抑制
排ガス処理設備
電気集じん器入口排ガス温度を低温化(200〜280℃)
ろ過式集じん器に交換
ろ過式集じん器入口排ガス温度を低温化(200℃未満)
マルチサイクロンろ過式集じん器に交換



 ■新設ごみ焼却施設に係る対策
施設運営
適正負荷ゴミ質の均一化、適正負荷運転
連続運転の長期化
定期測定の励行年に1回のDXN類濃度測定
受入れ供給設備
十分な容量のごみピット自動ごみクレーンの設備
前処理装置、供給装置の設置
燃焼設備
燃焼温度850℃以上(900℃以上の維持が望ましい)
滞留時間2秒以上
CO濃度30ppm以下(O12%換算値の4時間平均値)
完全燃焼100ppmをCO濃度瞬時値のピークを極力発生させない
連続監視温度計、CO連続分析計、O連続分析計の設置と監視
ガス冷却設備
廃熱回収ボイラ
(全連続炉のみ)
燃焼室をボイラ水管壁で構成
ボイラ伝熱面上のダスト堆積を抑制
ボイラ出口排ガス温度の低温化
排ガスのボイラ通過時間の短縮化
排ガス処理設備
集じん器集じん器入口排ガス温度を低温化(200℃未満)
吸着除去法粉末活性炭の吹き込み
活性炭系吸着塔の設置
分解除去法酸化触媒等によるDXN類の分解



2.焼却灰・飛灰のダイオキシン類の削減対策

 1)溶融固化処理

 溶融固化は燃料の燃焼熱や電気から得られた熱エネルギー、またはその他のエネルギーにより焼却灰・飛灰を加熱し、1,250からl,450°Cあるいはそれ以上の高温条件下で有機物を燃焼、ガス化させ、無機物を溶融してガラス質のスラグとして回収するものである。焼却灰・飛灰に含まれていた低沸点の重金属類は排ガス中に揮散したのち、灰ガス処理装置で捕集される溶融飛灰の中に濃縮される。一方、スラグ中へ移行した一部の重金属類はSiO2の網目構造の中に包みこまれた形となり、外部への溶出防止が可能となる。また、焼却灰・飛灰の中のダイオキシン類の多くは高温条件下で分解される。

 下記の表に示すような溶融固化処理により、焼却残査中のダイオキシン類総量の99%以上を分解することができる。

 ■焼却灰・飛灰等の溶融方式
溶 融 方 式炉 の 形 状
油・ガス等を燃料とした溶融方式
回転式表面溶融炉
反射式表面溶融炉(各種形式がある)
旋回流式溶融炉
コークスベッド式溶融炉
ロータリーキルン式溶融炉
電気エネルギーを熱源とした溶融方式
交流アーク式溶融炉
プラズマ式溶融炉(各種形式がある)
交流電気抵抗式溶融炉
直流電気抵抗式溶融炉
低周波誘導式溶融炉
ごみの熱分解ガス等を熱源とした溶融方式
熱分解・旋回流式溶融炉
部分燃焼式溶融炉(内部式溶融炉)



 2)加熱脱塩素化処理

 還元性雰囲気では、ダイオキシン類に含まれる塩素が水素と置換する反応が起こり、脱塩素化反応が進行する。飛灰を低酸素雰囲気のもとで350〜550°Cに保持すると、ダイオキシン類の脱塩素化が加速される。 加熱塩素化処理により、飛灰中のダイオキシン類総量の95%以上を分解することができる。
 加熱塩素化処理の実施に当たっては、加熱温度や酸素濃度を適正な範囲に保つよう管理するとともに、加熱処理の後でのダイオキシン類の再合成を防止するために加熱灰の急冷を行うなどの対策が必要である




3.最終処分場におけるダイオキシン類の削減対策と浸出水中のダイオキシン類の除去分解技術


  飛散等の防止
 廃棄物の投下や埋立作業時において、風による飛散を防止するため、覆土を的確に行うこと。
  遮水工及ぴ浸出水集排水設備
 埋め立てられる廃棄物の浸出水により、公共用水域や地下水を汚染することのないよう、遮水工の確実な施工に十分配慮するとともに、浸出水を速やかに埋立地外に排出させる浸出水集排水構造とし、埋立地内に浸出水を長時間貯留させないことが望ましい。
  浸出水処理設備
 浸出水処理設備により浮遊物質の除去を徹底し、処理水のSS濃度を10mg/l以下とすること。

 ■浸出水中のDXNs除去・分解処理技術
処 理 方 式処理の対象とするDXNの形態技 術 の 概 要
懸 濁 性溶 解 性
除去分解除去分解
生物処理法   
一般的にDXNsは生物分解性が低いといわれているが、一方で、DXNsを分解する有用微生物のスクリーニングや単離に関する研究が行われている
凝集沈殿法    
浸出水中のSS分、COD成分の除去を目的とする。
浸出水中のSS成分に付着したDXNsは、凝集汚泥に取り込まれることにより除去される
新・旧の両ガイドラインにおいては「DXNsを含有する浮遊性物質を除去するためには、中性凝集沈殿法(pH=7〜8)が適当」としている。
砂ろ過処理法    
一般的に凝集沈澱処理の後段に設置され、凝集沈澱処理水中に含まれている微細なSS成分の除去を目的とする。
微細なSS成分によるDXNsの流出防止に有効だと考えられる。
生物ろ過法    
槽内に桂石、多孔質セラミック等の特殊ろ過材を浸漬させ、酸素供給された浸出水を緩速ろ過することにより、有機物の生物酸化分解と浮遊物のろ過を行う。
SS除去に効果があるため、SS性のDXNsの対策にも効果があると考えられる。
活性炭吸着法   
一般に水に対する溶解度の小さいものほど活性炭に吸着されやすい傾向があるため、溶解性のDXNsの除去に有効だと考えられる。また、フミン質の除去にも有効。
膜分離法 MF膜    
分子レベルで分離することが可能であり、SSがほぼ検出限界以下になるため、SS性のDXNsの低減に有効。
膜の種類によっては浸出水処理にはあまり適さないものや前処理が必要なものもあるため、膜選定や処理フローには留意が必要。
UF膜  
RO膜  
促進酸化法   
UV、オゾン、過酸化水素の酸化力を利用して、主に溶解性のDXNsの分解除去を行う。
酸化方法の組み合わせや処理条件などにより、処理効率が異なる。
触媒法    
二酸化マンガン、二酸化チタン等の触媒を用いて、溶解性のDXNs酸化分解する。酸化剤を併用する場合もある。
好気性微生物分解    
好気性微生物を用いて、DXNsを分解する。
超臨界水酸化法    
臨界点以上の水(超臨界水)を溶媒とし、有機物を酸化剤により分解する。PCBなど種々の有機化合物に対し、高い分解特性を示す。元来は固形物を対象とするが水にも適用できる。
熱分解装置    
外熱式ロータリーキルンを用いてDXNsを分解する。
浮遊ろ材ろ過    
ろ材表面にコーティングした物質で溶解性のDXNsを吸着する。
蒸発分離    
蒸発蒸留により、DXNsを固化塩とともに分解する。