ノルウェイの森

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ノルウェイの森 村上春樹 完読 h23.2.14

 村上春樹のこの有名な作品を、長い間意識はしていましたが、
なかなか読むことができませんでした。
それが読めたのは、映画「ノルウェイの森」のおかげです(*^_^*)。
ぜひこれを機会に原作を読んでから、映画を見ようと頑張りましたが、
残念ながら映画の上映中には間に合いませんでした(^_^;)。
またDVDが出たら見るつもりです。

 村上春樹はジョン・アービングの大ファンで、
彼から強く影響を受け、
アービングの「熊を放つ」の翻訳をしたほどです。
私は一時、ジョン・アービングに夢中になった時があり、
そのことを知りました。

 村上春樹は「海辺のカフカ」を読んだだけでしたが、
「ノルウェイの森」に続いて、「1Q84」を今読んでいます。
その面白いストーリーと早い展開は、
アービングを彷彿とさせます。

 私はこの題名から、
ノルウェイの深い森が舞台の小説だと思いこんでいましたが、
実際はビートルズの「ノルウェイの森」からでした。
読み終わって必ずしもこの題名である必要はないと思いましたが、
直子の心の闇の深さが、ノルウェイの深い森のイメージと
よく合っている気もします。

 主人公である僕(ワタナベ)は私とほぼ同じ年代で、
ひょっとしたら同じ1950年生まれであるかもしれません。
私の大学生活は、大学紛争真っ只中の混沌とした世相でした。
しかしその中にも、明るさと未来が感じられた時代で、
その雰囲気がよく出ていた気がします。

 一番びっくりしたのは、性描写が結構きつかったことです(^_^;)。
この小説が若い女性の恋愛バイブルのような存在で、
大人気だったことを考えると、予想外のことでした。

 あの時代(1970年代)は、まだ性の解放はされてはいませんでしたが、
その方向への先駆けとなる時代でした。
(この小説は1976年に書かれた。)

 死(特に、自殺が……)が頻繁に出てきます。
私は自殺をしたいと思ったことは一度もありませんが、
世の中には私と逆の人も一杯いることも事実です。
そういうせっぱつまった状況にならなかった私は、
きっと幸せ者だったと言えるでしょう(*^_^*)。

 生を際立たせるために、死と生を対比し、
生の身近に死があることを描いていました。
とは言え、人は早いか遅いかは別にして、必ず死ぬわけで、
かのジョン・アービングも
「人は死を待つ病人である」と言っています(^_^;)。

 今は直截な言葉を避けて<心の病>というような、
ぼやかした表現にしていますが、小説のメインテーマは精神病です。

 生きてる人間にとって最も重要なのは、心のあり方です。
それをどうコントロールするかで、幸せになれるかどうか決まります。

 人によってはガラスのように繊細な心を持った人がいて、
人の言葉や行動だけでなく、自分の言葉や行動にも傷つき、
壊れて行きます。
ではこういう人はどうしたら良いのでしょうか?
 
 私は完璧主義に陥らないこと、
まあこれでいいやというような、自分との妥協が大切だと思います。
人を許し、自分を許す心、
特に自分には意識して甘くする必要があると思っています(^_^;)。

 私は社会人になって暫くして、不安神経症にかかったことがあり、
心の病のやっかいさは十分に知っています。

 結局、心の病は自分で直すしかありません。
いろいろな本を読み、いろいろな方法を試してみましたが、
なんとか自分の心の持ち方を変えることができるようになったから
不安神経症を克服できたと思っています。

 今は大丈夫ですが、全く油断はしていません。
その時の性質は今も持っているので、
いつ何時元に戻るかもしれないので、そうならないように努めています。
そのために常に自分に妥協し、自分を許すことを心がけ、
自分の人生なんてこんなもんだと、
決して深刻にならないようにしています(^_^)。

<僕=ワタナベ>
 小説は一人称で語られ、主人公は僕(ワタナベ)です。
その主人公の僕と直子との恋愛を軸に、二人に関わる人々を描いています。

 ワタナベは地方の高校を出て、東京の大学で、
外国文学(演劇論)を専攻しています。
そしていろいろな大学の学生が集まっている寮に入っています。

 恋人の直子とは、高校時代に知り合いました。
彼にはキズナという親友がいて、その恋人が直子で、
よく3人で一緒に遊んでいました。
直子とはキズナが自殺した後は疎遠になりますが、
東京で偶然再会して、何度か会う内に恋人となります。

 直子とは別に、同じ大学の学生である緑とは、
親友(友達以上恋人未満の関係)で、直子が自殺した後に恋人となります。

 その他に彼の寮の先輩である矢沢と、その恋人であるハツミさん。
そして直子と同じ精神病の療養施設に入っているレイコさんが、
主な登場人物です。

<直子>
 直子は精神を患い、大学の途中から、
京都の郊外にある療養施設に入っています。
そこは自然に溢れた広大な敷地の中にあり、
静かで落ち着いた共同生活は、
およそ病院というイメージは与えない施設でした。

 二人の出会いは、高校時代で、
直子にはキズナという恋人がいました。
そのキズナとワタナベは親友であり、よく三人で一緒にデートをしました。
それは3人の方が、二人だけより、
うまく打ち解けて話ができ、楽しかったからです。
しかしなぜかキズナは、高校3年の時に自殺をします。

 キズナが死んで疎遠になった二人ですが、
それぞれ大学生になって、東京で偶然出会い、
何度も会う内に恋に落ちます。
ワタナベと直子とが完全に結ばれたのは一度だけですが、
そのことを二人はものすごく大事にしていました。

<緑>
 ワタナベと同じ大学の学生である緑は、
東京の下町にある小さな本屋の娘でした。
母を早くに亡くし、父を看病していましたが、
父を亡くしてからは、姉と二人でアパート暮らしをしていました。

 明るくて活発な美人ですが、人と変わっている所が多々ありました。
緑には恋人がいましたが、なぜかワタナベに好意を持っていて
異性の親友として大切に思っています。
 
 まあ、私から見れば十分恋人だと思いますが……。
その証拠に結構きわどいHな話をしたり、
緑の部屋で一緒に過ごしたりします。
でも、二人は決して一線を越えません。

 緑はワタナベのことが、だんだんと好きになっていきます。
しかし、ワタナベにとっての直子の存在の大きさを
十分知っているので、それ以上中には入っていきません。

<レイコ>
 レイコさんは直子と同じ療養施設にいるルームメイトです。
 彼女がなぜ精神を病み壊れてしまったかの話は、
実に興味深いものがあります。

 彼女は幼い時からピアノ一筋で育てられ、その天才的な能力と相まって、
プロへの道をまっしぐらに進んでいました。
全て順調に行っているように見えましたが、
卒業を間近にした大事な発表会の前に、突然指が動かなくなります。
医者からは、ストレスによるもので、暫くピアノから遠ざかっていれば
治ると言われます。
そのため、その指示に従って療養をしますが、それでも治らないので
しかたなしにプロのピアノニストへの道をあきらめます。

 幸い彼女を理解してくれる夫と巡り会い結婚し、
自宅でピアノ教室を開き、近所の子供にピアノを教えていました。
順調に行って、過去のことを忘れかけていた時に、
ピアノを習いに来た一人の美少女によって、再び発病し壊れます。

 少女は実に巧みに嘘をつきます。
レスビアンの行為は自分からレイコさんを誘ったのに、
レイコさんから拒否をされると、自分は無理矢理されたのであり、
それによって深く傷ついたと嘘をつきます。

 この噂が近所に広まるにつれて、これはいかんと思ったレイコさんは、
すぐに転居をしてほしいと夫に頼みます。
それに理解を示した夫ですが、そのためにいろいろな段取りをつけるから、
しばらく待ってほしいと言います。
そのしばらくがレイコさんの予想した通り、
手遅れとなり再び発症します。
そのため、離婚をして夫と娘と別れてこの施設へ入りました。

 レイコさんはワタナベにとって、直子を知る唯一の手がかりであり、
直子にとっは心の許せる唯一の友人でした。
ギターも得意でクラシックの曲ばかりでなく、
ビートルズの「ノルウェイの森」もよく弾いていました。
直子の自殺の後、施設を出て知り合いのいる旭川へ行く前に、
東京に来てワタナベと結ばれます。

<矢沢>
 矢沢は、僕(ワタナベ)の寮にいる東大法学部の学生で、
この男は全てに対して完璧で、何事も簡単にやってしまいます。
女性はゲーム感覚でものにし、ものすごくもてます。
ワタナベもよく永沢に連れられ、一緒にガールハントに出かけました。
自己中で自分のことしか関心がなく、
自分を中心にしかものごとを考えることができません。
天才的な能力を持ち、優秀な成績で外交官になります。

<ハツミ>
 矢沢の恋人であるハツミは、
矢沢と別れてから、結婚し暫くして自殺をします。
矢沢を、性格や女の扱い方までを含めて、心から愛しています。
繊細でかつ聡明な女性で、
矢沢という男は結婚では縛れないこと十分知っています。

 療養施設で病状が悪化した直子は、
そこを出て専門の精神病院に行きます。
一進一退を繰り返しますが、
ある日、回復したことを理由に一度施設に帰ります。
しかし次の朝方に、森の中で首をくくって自殺をします。
しばらくの間、ワタナベは緑とも誰とも連絡を取らないで、
放浪の旅に出ますが、やがて立ち直り、緑と会い二人は恋人になります。

 この小説は次のような書き出しで始まります。
僕は38歳、今ドイツのハンブルグ空港へ着陸した。
そのボーイング747の機内から、
BGMとして「ノルウェイの森」がかかっている。
その曲から、僕は二十歳(1969年の秋)の時のことを思い出し、
回想をしていきます。

 なぜ直子が精神病にかかったか?
その理由は語られていません。

  

 

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