だいこん

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だいこん 山本一力 平成22年12月20日 完読

 安治とみのぶ夫妻には、つばきとさくらとかえでの3人の娘がいた。

 安治は腕の良い大工で、すこぶる人は良いのだが、
酒とばくちが弱点であった。
 
 安治は渡世人の伸介と、ひょんなことから知り合い
そこから賭博にはまり、十両の借金を賭場にする。
その借金は、10日ごとに利息として一両が必要であった。
一両は今のお金に換算すると10万円〜20万円程度になる。
安治の大工の稼ぎは月に3両であったが、
全て借金の利息として消えてしまった。
そして、伸助の執拗な借金の取り立ては、
長い間、この一家を苦しめて行く。

 そのため、妻のみのぶがそば屋で働いて生計を立てていた。
そば屋に行ったつばきは、みのぶが颯爽として働く姿が眩しくて
自分も大人になったら、食べ物屋で働きたいと思う。

 江戸の大火の後の炊き出しで
8才のつばきが炊くめしのうまさが大評判となる。

 そのことが縁で、つばきは9才から17才まで、
みのぶと一緒に、火の見番小屋の飯炊きとして働く。
(江戸は火事が多いので、火の見番は大事な仕事で、
昼夜にわたって多くに人が働いていた)

 あれ程苦しめられた借金も、
突然伸助の親分が廃業したことで、安治の借金は帳消しとなる。
これによって一家は、ようやく苦しい借金地獄から解放される。

 そうこうしている間に、安治の稼ぎと、
みのぶ、つばきの稼ぎを合わせて、183両の貯金ができた。
これを元手に、17才の時につばきは、
木場に一膳飯屋「だいこん」を開く。

 「だいこん」は、めしと漬け物、汁物は食べ放題で、
鰯の煮付けや、だいこんの煮付けのおかずを一品付ける。
今ならバイキング形式のランチ店のようなものである。

 鰯は魚河岸で安く大量に仕入れ、それをおいしくみのぶが料理する。
そして何よりも、つばきの飯のうまさが評判となり、大繁盛する。
妹のさくらやかえでの協力も大きかった。


 つばきは人柄が良く、気っぷも良かった。
さらに、儲けよりも人のこと、
人の喜ぶことを第一に考えることから、
人に好かれ、自然と彼女を助ける人が周りに集まって来た。

 大川の大洪水のために、「だいこん」をだめにするが、
すぐに盛り返す。
人と出会い、その人たちを助けるために、
いろいろな商売のアイデアが沸いてくる。
その工夫は現代にも通じるアイデアであり、
さらに店を盛り上げ大きくしていく。

 江戸時代、一般庶民である女性が、何の後ろ盾もなく、
一から店をやって、大きくしていくことは、
大変な時代であった。
 

  

 

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