高校生の仲良しグループが、傷を負った場所に行き、包帯を巻くクラブを作りいろいろな人の依頼で包帯を巻くという話です。 長編とは言え、新書版ですからそれほど時間をかけずに読むことができました。 天童荒太といえばすぐ[永遠の仔]を思い出します。今回、あれほどの衝撃的な感動はなかったのですが、ほのぼのとした、人の温かさは十分伝わってきました。 仲間をあだ名で呼ぶのは、永遠の仔と同様、実に的確でうまいですね(笑)。 誰でも心に傷を持っている、そしてその傷を抱えて懸命に生きている。その苦しみを解放してあげることは出来ないけど、その苦しみを知り、一緒に寄り添ってあげることは出来る。そんなことを作者は言いたいのでしょう。 これは、永遠の仔と同様のテーマ。<どんな人も生きていて良いんだよ>に通じるものがあります。 方言クラブを中学の時に始めた仲良しグループも高校受験の頃から、お互いの進路の違いを意識し、自分とは違う世界を感じるようになります。 あれほど仲がよくいつまでも一緒と思っていただけに、そのショックは大きいものです。でも、これは青春時代真っ盛りの、高校生なら誰でも経験をすることです。もちろん、私も経験をしています。友達との能力や生活レベルの差を感じ、自分が小さいもののように感じられて落ち込んだものです。 でも、そんな違う世界にすんでいると思っていた友達も、それぞれに違った形で心に傷を持っている。これに気づいた彼らはもう一度、お互いを求め合い、理解することができたのでした。 |