蜜月

 読書の目次へ 

 


蜜月 小池真理子


 最初は、夫(脳梗塞で倒れ意識障害がある)になぜあれ程の介護を、何の不満もなくやっているのか不思議だったのですが、それが読み進むに従ってわかってきました。「ただ一度の忘我」のために浮気をした自分を許し、じっと待っていてくれた夫への感謝の気持ちだったんですね。そして、伊佐夫も同じ経験をしていた。それで杳子のしたことが理解できたんです。

 

 それにしても、なぜ杳子は夫の元へ帰ろうと思ったのでしょうか?別れを決意したシーンは、環がアトリエで全裸の自分の自画像をかいている姿を見た時ですね。環の美しさに人間離れした神々しいものを感じ、そこから、現実に目覚めたのかな?

 

 

蜜月の最終章に、環自身の口から、才能を持った人間の苦しみみたいなものが吐露されました。感受性が豊かで、才能があふれる人間は、傷つきやすく疲れるのでしょう。私などは、才能のかけらもないからかえって気楽に生きられるのかも知れません。

 

 小説を読んでいていつも感じるんですが、小説家の人はどうしてこんなにいろいろな知識を持っているんだろう。本当に幅広くそしてある部分では深い知識を持っている。それらをどのように取得しているのか、一度見てみたいものです。まさか、百科事典を横に置いて小説を書いているわけではないから、集めた知識を自分の中に入れ、それを消化して書いているのでしょう。自分が体験したものでなければ書けないなら、殺人や強盗は書けません。どこかで知識を集合させて、自分の体験に近い状態に昇華をさせるのでしょう。

  

 

上に戻る