貫井徳郎の<崩れる>を読みました。<結婚をして、しばらくしてカスをつかんだことを確信した>このことがすべてを暗示していました。大学を出て銀行に勤めて安心したのもつかの間、2ヶ月でやめてアニメの専門学校へ行きたい、その学費を出してくれと言う義弘。すべてを芳恵に任せ、一切の夫としての責任を果たそうとしない浩一。わがままで自分勝手な家族を我慢に我慢を重ねて支えてきても、ついにその限界を超えた。「これで一人ぼっちだと思うと少し寂しい気がします。でも、あんな家族ならもう2度と欲しいとは思いません」この言葉ずっしりと心に響きました。35歳なんですね、私は初めて彼の作品を読みましたが、わかりやすい文章を書ける人ですね、そのおかげでイメージをはっきりとさせることができました。どういう結末になるか?だんだんと迫ってくる緊迫感が見事でした。特に、芳恵が殺人を侵す日の、猛暑、バスでのトラブル、親子げんか、素麺をゆがくなど、現実的だけに説得力がありました。
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