ペイフォワード

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ペイフォワード(可能の王国)  h13.3.1(映画館で見る)

監督 ミミ・レダー

出演 ケビン・スペーシー(シモネット先生役、アメリカンビューティで主演アカデミー主演男優賞) ハーレイ・ジョエル・オスメント(トレバー少年役シックスセンスで名演技 ヘレン・ハント(トレバー少年の母親、恋愛小説家でアカデミー主演女優賞)

 

 
   物語の舞台はラスベガスである。主人公のトレバー少年(オスメント)が中学1年になった最初の日、その教室には、担任で社会科の先生ユージン・シモネット(スペーシー)がいた。顔中がやけどの跡で覆われた彼を見て、生徒達は驚くが、それを全く意に介せず、自信たっぷりに生徒達に話しかけ、黒板に課題を書いた。『世界を良い方向に変える方法を考え、それを実行せよ。』彼の出したこの課題を見た生徒達は、そんな難しいことは不可能だと騒ぎ出す。それに対して、シモネット先生は「考えることが大切であり、必ずしもできなくても良い」と答える。トレバー少年は、その課題に対して、ペイ・フォワード(先に贈れ)というシステムを考えた。自分の受けた恩をその人ではなく、3人の見知らぬ人へ返すのである。いわば善意のねずみ講である。

 トレバー少年は母子家庭だった。母のアーリーン・マッキーニ(ハント)は、生活のため、昼はカジノ、夜はストリップバーのウェイターとして働いていた。また、アルコール依存症で、なかなか酒がやめられなくて苦しんでいた。そのため、嫌なことがあると、それを紛らすために、家中の隠してある酒を探しだして、吐くまで飲んだ。そんな母を見かねて酒を何とかやめさせようと、少年は母を説得したり、酒を捨てたりするがなかなか効果が表れない。別れた夫もアルコール依存症で、酒が入ると暴力を振るった。そんな暴力に我慢したのは、自分がぶたれている内は、夫の暴力が子供には向かわないと考えたからだった。しかし、その光景は子供にとってたまらないものだった。しかし、この暴力夫は、随分前に家を出て、現在は行方不明になっている。

 トレバー少年は、3人の人に善意を施した。一人目は、ラテン系の移民であるホームレスである。彼に自分の貯金からお金を渡し、自分の家の車を修理させる仕事与えた。そして、自分の家の駐車場に泊まらせた。彼は麻薬の常習者であり、少年はこの善意によって彼を立ち直らせようとしたのだった。しかし、彼は意志が弱く誘惑に負け、結局麻薬はやめられなかった。この事実を知って少年はがっかりする。家にホームレスがいることを全く知らなかった母親は、彼から事情を聞いてびっくりした。そして、このへんてこな課題を出した、シモネットに文句を言いに行った。(このように、二人の出会いは最悪であった)

 二人目は、担任のシモネット先生である。少年は、独身である先生を、自分の素敵な母親と結びつけようと、善意のキューピットになる。ある日、シモネット先生の所へ、自分の書いた手紙を、母親から預かったような振りをして持っていく。それを信じたシモネットは、少年の家に母親を訪ねる。しばらくして様子がおかしいので、息子の画策だと気がつく二人であるが、彼女が積極的にリードする内に、しだいにうち解けていく。そして、この日をきっかけに二人の交際が始まり、いつしかお互いに好意を持つようになる。しかし、彼女は、彼がいつまで待っても、自分の身体に触れてくれないことに不信を持つ。彼女は、その理由を勇気を持って彼に聞いた。それは、彼が変わることを怖がっていたからだった。今までと同じ事の繰り返しであれば自分で管理できる。だが、今までにない経験をするのが怖く、躊躇させた。生徒には、変わることを強く期待しているのに、その期待する教師が変化を怖れていた。しかし、彼女と別れて初めて、彼女なしでは生きられないことに気がつき、彼より愛を告げる。ようやく、二人に身体の関係ができ、トレバー少年を含めた幸せな家族ができたと思った矢先、行方不明だった父親が突然帰ってきた。これでせっかくの努力も水の泡、少年は再び悲しみにくれた。

 そして、三人目は、いじめられっ子の少年を助けることだった。しかし、いざいじめの現場にぶつかっても、集団でいじめる少年達が怖くて、一言も発することができなかった。少年は、自分のふがいなさに打ちひしがれた。そして、自分の考えたペイ・フォワードは、すべて失敗したと思っていた。

 アル中を直し、もう一度やり直したいと、少年の父親が突然帰ってくる。それを信じた(子供のためにも信じたかったのだろう)母親は、家に入れ一緒に生活する。シモネットは、暴力を振るう父親を信じてはいけないと説得する。それは自分の父親もアル中で、母や自分が殴られていたからだ。大きくなりそんな父親から逃げて一人で暮らしていたが、体力にも自信がつき、これからは自分が母親を守ると宣言したら、突然殴られ縛られた上に、ガソリンに火をつけられ全身に火傷を負わされた。その時の薄ら笑いを浮かべた父親の顔がいまだに忘れられない。その時の体験を彼女に話し、トレバーのためにも、別れる事を強くすすめる。しかし、逆に彼女は息子には父親が必要と、一緒に暮らす選択をし二人は別れることになる。

 少年が失敗に終わったと考えていたペイ・フォワードは、知らない所で広がりを見せていた。ある日、ロサンゼルスで起こった人質事件に駆けつけた新聞記者が、逃げる犯人に車を当て逃げされ、自分の車が使えなくなってしまった。持って行き場のない怒りに打ちひしがれる新聞記者は、そこを散歩に通りがかった、金持ちの老人から、無償でジャガーを贈られた。この奇想天外な贈り物を不審に思った新聞記者は、その理由を紳士から聞き出した。それが、ペイフォワード(先に贈れ)であり、その老人も他人から善意を施され、次に贈るように言われたのだった。取材する内に、この善意の運動がラスベガスから起こったことを嗅ぎつけたに新聞記者は、単身ラスベガスに乗り込み、この運動を言い出した人を必死で探しだす。ここで、意外な展開があるが、それは映画を見てない人のために、秘密にしておく。そして、トレバー少年が考え出したものだと分かった新聞記者は、少年を取材し全米に彼を紹介した。そのインタビューが行われた教室に、母親も駆けつけた。少年はその中で、自分の試みはすべて失敗したが、世界を動かすためには、変化を怖れてはいけないと訴える。それを聞いたシモネットは、自分を反省し、マッキーニとの愛をやり直す。

 また、その頃ラテン系のホームレスの青年は、自殺しようとする女性を助ける。彼女から、なぜ何の得にもならないのに、自分を助けるのかと聞かれた彼は、それはペイ・フォワードであり、それで自分も麻薬から立ち直ったことを話す。さらに、助けたいと思っていたいじめられっ子にも、いじめの現場で勇気を出し助けることができた。このように、彼の施した善意は3人とも達成された。しかし、思いもかけぬ結末が(これも秘密)、さらに、感動のラストシーンが待っている。

 

 


◎ 物語の中心は、トレバー少年が考えたペイ・フォワードの実行と、母親とシモネット先生との恋愛が中心である。ただ、その中で語られる、アルコール依存症と父親の暴力の問題は深くて重い。

 新聞記者が、ペイ・フォワードを始めた人を捜し、そこに意外な人物が登場する。こんなミステリータッチの展開もあり面白かった。特に、ラストシーンは感動的で涙がこみ上げてきた。

 心の中が暖かい感動で満たされた。人の善意を信じ、こんな風にペイ・フォワードできたら、本当に世界は良い方向に変わっていくような気がしてきた。


◎ 映画を見終わって、自分の心の中が暖かい感動で満たされた。人の善意を信じ、こん な風にペイ・フォワードをしていったら、本当に世界は良い方向に変わっていくような 気がしてきた。

◎ この映画で、善意の心を持った良い人間を一杯見た反面、シモネットの父親のような 人の心を持たない、冷酷で鬼畜のような人間もいることも事実だ。(トレバー少年の父 親もそうだ。)ねずみ講が無限にお金が続かないために、途中でだめになるのと同じよ うに、こういう人たちによって、ペイ・フォワードの運動もストップしてしまうのだろう。
 

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