プルーフ・オブ・ライフ

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監督:テイラー・ハックフォード

出演:メグ・ライアン(妻アリス) ラッセル・クロウ(人質交渉人)

 プルーフ・オブ・ライフの題名の意味は、プルーフ(証)ライフは、人質がまだ生きていること。つまり生存の証のことである。人質解放の交渉は、必ずこの証を確認しながら進める。人妻と夫を助けるための交渉人の大人の恋を描いている。実生活ではこの二人不倫の関係になったが、映画では忍恋であった。

 


 南米のテカラでダム建設の責任者であるピーターは、ダムの完成に心血を注ぎ、妻のアリスをかまってはやれなかった。アリスは、8ヶ月前アフリカで流産した傷を、今も引きずり、それでも何とか夫に協力し付いて行こうと努力をしていた。ただ、もう2度と第三世界で妊娠するのは嫌だと考え、できるならばアメリカに帰り、もう一度やり直したいと考えていた。彼女が流産してからの夫婦の関係は、あまりうまくいっていなかった。彼の勤めていた石油会社が、この町でダム建設をやっているのは、パイプラインを引くためのカモフラージュだった。ある日、ダム建設の資材が遅れ工事が立ち往生していることを、直接会社の幹部に言おうと考えたピーターは、妻とパーティに出るが、そこには、彼の期待した幹部は誰もいなかった。その頃幹部達はヒューストンに飛んで、総合企業への吸収合併の契約に立ち会っていた。彼は、それを全く知らされていなかった。それどころか、会社が赤字になっていることさえ、ダム建設に夢中になっていたため、気が付かなかった。 石油会社が吸収合併されてなくなることで、ダム建設は中止となった。この事実を知って彼は、今までの8年間は、何だったのかと妻に怒りをぶつける。全く意味のない8年間だったという彼に対して、アリスは、自分との結婚生活そのものを否定されたものと感じ、悲しくなる。これをきっかけに、アリスは流産の話を蒸し返し、口論の末、ピーターが別居を口にする。

 ピーターは、必死で幹部を説得し、ダム建設を再会させようとするが、会社がつぶれたという事実の前になかなかうまくいかない。それでも、何とか説得しようと会社に向かう途中、LETと名乗る反政府組織に誘拐される。会社では、善後策を検討した。保険会社からは、誘拐専門の交渉人としてテリー・ソーンが派遣された。彼は、交渉人のプロとして数々の輝かし実績があった。彼は、アリスの不安を和らげ、自分に任せれば絶対生きて帰れると、断言しアリスの信頼を得る。相手は、最初から金が目的であるから、人質は大事に扱う。最初は大金を要求するが、それに応じると金も人質も殺してしまう。ねばり強い交渉によって、徐々に金額は低くなる。それが、交渉人の腕の見せ所だ。

 ところが、油田会社は突然誘拐保険を解約し、さらに吸収合併した会社もこの件については消極的だった。そこで、テリーの会社は撤退を余儀なくされた。アリスは、あれ程信頼していたのにと必死で頼むが、彼は受け付けない。飛行機で帰国したテリーの代わりに、地元の人間が交渉人になった。しかし、彼は、交渉のテクニックを全く持っていなかった。犯人の言うがままに、身代金の前渡し金として要求のあった、5万ドルを無条件で受け入れてしまう。これを見てアリスは不安になったが、今はこれしか頼る道がなかった。落胆しながらお金を数えている時に、ドアをノックする音が聞こえた。テリーが帰って来たのだった。彼は、会社を離れ、個人の資格で彼女を助けに戻って来た。それは、明らかに彼女に恋をした証拠である。(彼は、妻と離婚し中学生ぐらいの息子がいる。)

 その頃ピーターは、山奥に移動させられていた。満足な食事も与えられず、長い間歩かされて足は、傷だらけだった。同じように誘拐されていたイタリア人の宣教師に助けられながら、何とか助けを待っていた。その間、彼女の写真を見ながら、今までの自分の至らなさを反省していた。それは、彼女も同じだった。二人の関係が改修されるのと裏腹に、アリスの気持ちはテリーに傾いて行った。

 人質の解放交渉は難航を極めた。しかし、マルコという交渉相手を得てからは、テリーは自信を持って、60万ドルで決着を付けるとアリスに断言した。そのお金を、作るためにピーターの姉は国に帰り金策に奔走する。人質の生存の証(プルーフオブライフ)を確認しながら、最初は500万ドルが犯人側の要求であったが、徐々に下がり65万ドルまで行った時、アリスとテリーはしてやったりと目で合図した。しかし、その頃ピーターは、偶然捕らえられている付近の地図を見て、それが町に近いことを知り、イタリア人宣教師と一緒に逃亡を計る。しかし、そんなに遠くへ行く前に、ピーターは獲物の罠にかかり捕まり、宣教師は、撃たれて激流の中へ落ちて行った。

 ここで、突然交渉が途絶える。それは、反政府勢力が資金源としていた、コカイン畑を通るパイプラインを守るため、軍隊が出動し、人質どころではなくなったためだった。これを知ったテリーは、自分達の手で人質を救出するしかないと決意する。その作戦は、政府をたきつけ、軍隊を出動させる。それに応戦するために反政府部隊が出動し、村が手薄になった時、人質の救出にかかるのだった。

 いよいよその作戦に出撃する時、テリーはやさしくアリスに口づけをする。このキスは、いろいろな意味が込められている、素敵なキスシーンである。テリーとしては、二度と生きては帰れないかも知れない危険な仕事への出発であるし、アリスの夫を無事助ければ自分の役割は終わる。そんな複雑な意味を込めたお別れのキッスである。好きだけど好きと言えない。そして、好きだけど一緒になれない。そんなやりきれなさが感じられて切なくなる。これは、最初からかなわぬ恋であることはわかっていたことである。また、アリスも夫の安否を気にするが、夫が助けられれば、テリーとは別れなければならない。助かったほしいようや、助かって欲しくないような、そんな複雑な気持ちだった。キッスの後、テリーの出て行く姿を見送る彼女の表情は、そんな女の切ない感情がよく出ていた。

 必死に救出作戦は、なかなか迫力があり、手に汗握り、思わず座席から乗り出して見てしまった。そして、危機一髪無事人質は救出された。アリスと再会するピーター、二人は、再会を喜び抱き合う。しかし、アリスの視線は、自然にテリーの方へ行く。本当は彼と一緒に行きたい、そんな思いが伝わってくる。しかし、大人の二人は、何にもなかったように、握手をして別れる。二人を乗せた車が空港に向かうのを遠くで見つめる、テリーの後ろ姿淋しい。

 

 


◎ プルーフ・オブ・ライフの題名を違った視点で見た。それは、ライフという言葉を「愛」という言葉や、「人生」という言葉に置き換えて見る。すると、テリーにとって人質を奪還するのは、アリスを愛している証であり、アリスを愛することがテリーにとっての人生の証であったことが分かる。この映画のラッセルクロウは、とにかく格好良い、格好よすぎる。男が見てもほれぼれする。画面から無口で誠実な人柄が滲み出ているし、絶対的な強さを内に秘めている。これは、女性としてはたまらないのでしょう。これでは、恋をしないわけには行きません。

◎ プルーフ・オブ・ライフは、プルーフ(証)ライフは、人質がまだ生きていること。つまり生存の証のことである。人質解放の交渉は、必ずこの証を確認しながら進める。私は、この題名を違った視点で見た。それは、ライフという言葉を「愛」という言葉や、「人生」という言葉に置き換えたのだ。すると、テリーにとって人質を奪還するのは、アリスを愛している証であり、アリスを愛することがテリーにとっての人生の証であったことが分かる。

◎ この映画のラッセルクロウは、とにかく格好良い、格好よすぎる。男が見てもほれぼれする。画面から無口で誠実な人柄が滲み出ているし、絶対的な強さを内に秘めている。これは、女性としてはたまらないのでしょう。これでは、恋をしないわけには行きません。

◎ この二人の恋は、大人の恋で忍ぶ恋である。相手の立場を考え、好きでも好きと言わない。それどころか、おくびにも出さない。でも、アリスはテリーを好きになっている、それが画面を通してわかる。だから余計辛い。

◎ 確かに、この映画はラブストーリーではなく、どちらかと言えばアクション大作と言った方がいいかも知れない。(私は、ラブストーリーの方で見てしまった)しかし、ここで語られた恋は、大人の恋愛のバリエーションの一つであり、それを素敵な形で見せてもらった気がする。最後にアリスが、テリーを選んだのでは、映画として品がなくなる。

◎ 現実社会だったら、この二人が結ばれても何の不思議もなかったでしょう。この夫婦別居をすることが決まっていたのでし(別居とは、離婚の一歩前)、そこに、テリーのような信頼ができ、頼りがいのある、格好いい男が出てきたら、そちらになびかない方がおかしいです。

◎ 映画では、緊急事態(誘拐事件の被害者の妻と交渉人としての出会い)が夫婦の絆を元に戻した形になるが、本当に二人はうまくいくのでしょうか?一度こぼれた水は元に戻らないものです。映画的でなければ、アリスはテリーを選ぶべきでしょう。

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