AI

映画の目次へ 

 

 AIは母親(モニカ)と養子になった人造人間である少年(デビット)との愛の絆を描いたものですが、とにかく、オスメント君がうまいです。ひょっとしたら、今年度のアカデミーの主演男優賞を取るかもしれません。いつもながら、演技が自然で、無理がなかったと思います。彼の悲しそうな表情は抜群ですね。(シックスセンスの時も悲しい表情がよかった)これで、オスメント君の作品は、シックスセンス、ペイフォワード、AIと3つ見ましたが、見る度に上達している気がします。

 地球の近未来を描いた作品でした。地球温暖化が進み、北極海の氷がすべて溶け、ほとんどの都市が水没する。その中で繁栄するわずかな国は、食料のいらない人造人間を大量に作り、人間と共存していた。そんな時、人造人間を作っていた会社では、人間と同じような愛情をもったロボットを開発し、販売しようとします。その試作品を使う人間として、その会社の社員の中で選ばれたのが、5年ばかり前から冷凍保存され生き返る望みのない、自分の子供をあきらめきれないモニカ夫婦でした。夫は、妻に死んだ子供をあきらめさせるために、失った子供と同じ年齢の、愛情を持ったロボット(デビット)を送ったのだった。

 最初はロボットに拒否反応を示すモニカであったが、しだいに愛情を感じるようになっていきます。また、そのロボットはある言葉を教えると人工知能(AI)によって、その言葉を吹き込んでくれた人を本当の母親と感じるように作られていました。このようにして、モニカにデビットは本当の子供のように可愛がられていましたが、ここに信じられない奇跡が起こります。5年前から植物人間となり、冷凍保存されていた、絶対に生き返るはずのない息子が元気になって戻ってきたのでした。ここから、デビット少年の不幸が始まります。

 度重なる、息子のいじめや人間達の人造人間への差別にデビットは必死で耐えます。その姿はいじらしいものでした。でも、プールで自分の子供を殺されそうになったり(いつまでもプールの底で沈んでいた、デビット少年の姿が悲しかった)自分の髪の毛を夜中に寝室に忍び込んで、ハサミで切りに来た姿を見て、モニカはデビットを捨てる決心をします。

 モニカは何も言わずにデビットを、車で人造人間の製造会社へ連れて行きます。会社に行けばデビットは廃棄処分されると分かっている、でもそれは絶対にできない。だから、工場の近くでデビットを降ろし、一人で生きていくように必死で訴え、逃げるようにしてその場を去ります。自分の子供と同じように思っていたデビットを、家族のために捨てなければならない、その時のモニカの苦悩は、いかばかりであったでしょうか。

 捨てられたデビットは、ポンコツロボットの回収車に捕まります。そして、人間達が快楽のために行ってる、ロボットを破壊するショーに連れて行かれます。その場を、観衆の人間的な心(子供のロボットを破壊するのは忍びないという優しい心)によって、危機一髪救われます。そこで、セックスロボット(ジュードロー)と知り合い、自分を人間にしてくれる、青い妖精を探す旅にでます。それは、モニカが読んでくれたピノキオが青い妖精によって人間になれたことを覚えていたからでした。

 幾多の困難をくぐり抜け、海底深くでようやく青い妖精を見つけたデビットは、そのまま願いを込めたまま、氷にとだされ、2000年の時が経過します。

 2000年後の世界は人類が滅び、宇宙人(得体の知れない知的生物)が支配しています。彼らは、デビットを失われた人類の謎を解く鍵として重要視し、何でも願いを叶えてやると言います。そこで、デビットはモニカに一目会いたいと言います。宇宙人達は、彼女の髪の毛からモニカを甦らせ一日だけの命を与えます。

 何も知らないモニカと昔と同じような幸せな一日を送ったデビットは、モニカと一緒に深い眠るに入ります。それは、死への旅立ちであり、デビットがあれ程願った人間になりたいという願いが叶った瞬間でもあります。

 それにしても、スピルバーグはうまいです。映画の好きな人を飽きさせない。ストーリーも面白いし、CGをふんだんに使った、未来都市も素晴らしい出来です。そして、ラストはまさにこうあって欲しいと観客が願っているような、そんなハッピィーエンドな終わり方でした。

 

 

上に戻る