アイアムサム

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 ショーペンは実にうまいですね、サムになりきっている。
自分の周りにサムが現れても何の不自然さも感じないでしょう。

 私は、彼の作品はほとんど見ていません。
ちょっとくせがありそうで、敬遠していました。
随分前に「デッドマンウォーキング」をビデオで見て、
後はニコールキッドマンとの「インタプリター」だけです。
これも、キッドマンだから見に行ったわけです(笑)。

 3作しか見ていなくて、彼の評価をつけるのも乱暴な話ですが、
いろいろな役柄を見事にこなす演技派の俳優。
この評価は「アイアムサム」の演技が特に大きいです。

 私は食わず嫌いな所があって、
顔つきやイメージで避けることがあります。
ロビンウィリアムスもしかり、ジョニーディップもしかりです。

 この映画はずっと以前から気にはしていました。
何度も借りようと思ったのですが、何か躊躇するものがありました。
私は最初から哀しいとか辛いと思われる映画を見るのが苦手です。
これも勝手に自分で思いこんでいるんですが……。

 ルーシー役のダコタ・ファニングもうまい。
あの年齢を考えるとやはり天才と言わざるを得ません。
自然な演技力は何の違和感を与えません。
そしてなにより可愛い(笑)。

 彼女の存在を知ったのも、このアイアムサムのおかげ。
宇宙戦争を見る前に知っていたら、あの映画の見方、評価が変わったかも?
ただ、あの映画では彼女<さけんでばかりで、演技をさせていなかった>
とのこと。だから、彼女の演技をうまいと思わなかったわけです(笑)。
監督に問題ありかな?
最近のスピルバーグは冴えがないですね。

 自閉症の話を会った時にしました。
私も人から聞いた話ですから、確認をしているわけではありません。
自閉症の人が全てというわけではなくて、
その中でも特殊な人は、自分の興味のあること、
例えば日本全国の駅名だったり、アニメのキャラクターだったりするのですが、
自分の脳の限界までは覚え、それは絶対に忘れないそうです。
でも、それ以上は覚えることができない。
天才や特殊な能力を持った人は別にして、
普通の我々は、<覚えるために前の事を忘れる>わけです。
この映画のサムはビートルズの事をよく知っていました。
ビートルズに興味のあった彼は、誰かから聞いたビートルズの事だけを
記憶にとどめたわけです。
同じように、サムの仲間に<映画通>の自閉症の人がいました。

 サムの部屋の上の階に住むおばあちゃん、
アニー(ダイアン・ウィースト)は、<モンタナの風に吹かれて>や
<カイロの紫のバラ>にでていたそうです。
私は両方とも見ているので、どこかで……と思っていたのですが……。
この間飲んだ時に、カイロの紫のバラの話はちらっとしましたね。
映画好きで映画館だけが憩いの場であった女性が、
スクリーンの中の俳優に恋をします。
毎日毎日通う彼女、いつしかそんな思いが通じて、
あこがれの君がスクリーンの外に出て、二人は恋をします。
最後の落ちがおしゃれです。
ウッディアレンの映画ですが、
彼の作品の中では一番好きな(まともな)映画だと思います。

 この映画を見ながら、<アルジャーノンに花束を>という
小説を思いだしてしまいました。
サムがこの小説の主人公とよく似た環境
(子供はいなかったけど……)だったからです。

 スタバで、みんなに<グッドチョイス>と声をかける時、
お客のみんなの優しい顔が印象的でした。
彼の人柄を知って、受け入れているという感じですね。
そう言えば、オープニングで砂糖などの袋を
几帳面にそろえるシーンがありました。
あれなどは、主人公が自閉症であることを暗示する意味があったのでしょう。

 女エリート弁護士のリタ(ミシェル・ファイファー)は、
この映画では重要な役割を担っていました。
彼女の登場と裁判で一気に動きのあるテンポのいい映画になりました。

 彼女は仕事のできるキャリアーウーマンでしたが、
大きな悩みを抱えていました。
特に一人息子との関係は思うようにいきません。
彼女がサムから一番学んだ事でしょう。

 私が一番感動した所は、
女弁護士の告白の場面でした。
サムから完璧で自信満々だと指摘された彼女が、
自分の悩みを涙ながらに語ります。
どんな完璧に見える人でも、人にはわからない悩みがある。
彼女は、仕事優先の人生で成功をしたかのように思われていた。
しかし、夫は知らぬ間に別のいい女のもとに走ります。
子供には時間がなくてかまってやれない、
少しの事でイライラしてすぐに怒ってしまう。
子供との接し方をサムに教わります。
お金、地位、知識とは全く無縁で、もっとシンプルなもの、
<愛>の表現の方法。
愛を与えることで、相手からも愛が帰ってくること。
 

 

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