ラストサムライ

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 12月29日に「ラストサムライ」を見てきましたので、その感想を書きます。

 この映画のメインテーマは「武士道」である。西洋にはない日本独特の文化、目に見えないけど、今でも日本人の中に脈々と流れている、精神的なバックボーン。外人から見たら、不思議に見える日本人(日本文化)の謎解きがここにある。

 武士道とは<散る花のごとく潔さ>である。定められた運命に従い、それを淡々と全うする。死を恐れず死をもって人生を完結させる、よって、名誉ある死(切腹とか討ち死)は喜びである。死とはその人の人生を有意義なものとして、完結させる儀式である。ある意味では死ぬことを目標に生きているといっても過言ではない。<武士道とは死ぬことと見つけたり>この有名な「葉隠れ」の言葉の通りである。

 勝元(渡辺兼)がたくさんの桜の花を見て、「完全な花は少ない」と言う。彼の言う、完全(完璧)な人生とは、どんな試練にもめげずに、正義(自分の信念)を貫き通すことである。

 半分以上が戦闘シーンであったが、なかなか迫力があり見応えがあった。日本刀の特徴をうまく使った殺陣で、美しくさえあった。オールグレン(トムクルーズ)が、真田広之の指導の元、剣の道を究めて行く姿が良かった。剣の奥義<無>これも西洋人には理解できない分野で、座禅を組んで瞑想するシーンが一杯出てきた。

 外国の監督が、映画で日本を描く時の違和感が全くなかった。あの時代(明治の始め)の日本を正しく素直に描いていたと思う。パールハーバーでの日本海軍の描き方はひどかったが、これなら納得できる。

 勝元の弟の嫁にあたる、<たか(小雪)>が日本女性の良さをうまく出していた。おとなしく控えめだけど芯は強い、そして働き者で礼儀正しい。好きな人への愛の表現も、控えめで、かえってそれが見ているものに同情を与える。<彼女は今こうしたいと思っているのに、それを必死で抑えている……>そんなことが表情から察せられ、たまらなくせつなくさせる。

 私は娯楽映画の醍醐味は<勧善懲悪><必ず最後に正義は勝つのハッピーエンド>これにつきると思う。この映画が娯楽映画かどうかはわからないけど、この期待を裏切らなかったことがうれしい。この最後の予期せぬプレゼントによって、ハッピーな気持ちで映画を見終わることができた。

 映画そのものには矛盾が一杯あった。史実からすれば、最後のどんでん返しもなかっただろう。でも、それらを差し引いても良い映画だったと思う。戦闘シーンで興奮し、愛する二人の心情を察すると、胸が熱くなり涙が流れた。良い映画を見た後は何か得をしたような気分になる。私にとって、今年一番の映画であった。

 

 

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