たそがれ清平衛

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 たそがれ清平衛の名の由来は、「妻に労咳で先立たれ、多額の借金を返すために、残された幼い二人の娘と病気の老母のために、仕事が終わる(たそがれ時に)と同時に、まっすぐ家に帰り、家事と内職に明け暮れる」ことからである。同僚からの酒の誘いも一切断る。仕事だけの生活で、なんの楽しみがあって生きているんだろうと同僚から陰口をたたかれている。

 彼は、家族や自分の好きな人を守るために以外は、自分の力をひけらかさない。出世や名誉を望まないで謙遜の美学に生きている。彼の中に、「足ることを知る」日本人の美徳をみた。二人の娘の成長を楽しみに、日々の貧しい生活に甘んじている。いや、そのことに幸せを感じている。人は、家族のために自分を殺して(犠牲にして)生きていけるのか?そして、それを自分の喜びと幸せと感じられるか?を問うた映画であった気がする。

 清平衛は、下級の平武士(50石)で、亡くなった妻が労咳で長い間煩い、その薬代で多額の借金をしてしまう。それを返すために、仕事から帰って家事を終えた後、内職で虫かごをつくっている。いろりを囲んで、10歳になる娘もそれを手伝っている。ぼけた母親、今で言うアルツハイマーの母親を尊敬し、ものすごく大切にしている。昔の慎ましい庶民生活がそこにある。テレビがないその時の楽しみは、親から昔話を聞いたり、簡単なゲームをするだけ。

 清平衛の幼なじみで、恋人役のともえを演じる宮沢りえは良いですね。演技も自然で、優雅で上品な武家の娘を好演していました。ものすごく綺麗です。古風で耐える女性だけど、ちゃんと自分の意志をもって行動している姿が、てきぱきとして気持ちが良かったです。やさしさと同時に芯の強さを感じました。そして、ラストでの決断は期待していたとは言え、やはり嬉しくて涙が出てきました。

 あんな女性が現れて、自分にプロポーズをしてきたら、私なら、二つ返事でOKです。でも、清平衛は自分の身分(50石)と、ともえの実家の身分(400石)との釣り合いを持ちだし、彼女が貧乏生活に後悔すると、その申し出を断ります。自分のことよりも好きな人のことを第一に考える、清平衛らしい考え方です。(私にはできません) 

 清平衛が現状を打破するには、二つの道があったと思う。一つは、彼がとった、たそがれと共に帰る生活。これは、貧しいけども平和で安定した生活がおくれる。特に、家族とのふれあいと生活を大切にすることができます。もう一つは、仕事で頑張って出世し禄高をあげる。これによって借金は返せ、生活は豊かになる。前のものは消極的、後のものは積極的な方法です。どちらをとるかは、その人の考えた次第です。そして私は、どちらかというと後者のほうです。

 

 

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