時雨の記

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 この映画は、吉永小百合と渡哲也の主演による不倫映画です。ただ、嫌らしさは全くなくて、大人の純愛を描いた映画と言った方が適切です。壬生(渡哲也)は妻も子もありますが、20年前から憧れていた多江(吉永小百合)に偶然出合い恋に落ちます。しだいに交際を通じて、お互いを大切な人と確認していきます。そして、二人はある約束をします。年を取ったら、二人で京都の吉野に小さな庵を建て住むことを……。でも、この約束は壬生が心臓病で急死することで実現しませんでした。素敵な映画です。

 壬生は彼なりに筋を通そうとしています。離婚して財産を全て妻に渡しています。お金さえ渡せば良いのかと言われるとそれまでですが、彼として精一杯の気持ちだったと思います。

 彼の結婚生活は普通のごく普通のものであった気がします。恋愛結婚し、子供ができ、自然に愛が薄れていく。そしていつしか空気のような存在になる。この夫婦にはすでに愛はなく、一緒に暮らす同居人、そんな存在であった気がします。そして、その味気ない生活の中に、かつての初恋の人が住みつき、再び心が燃えていく。50歳を超えた今、彼は自分の心に正直に生きたい。つまり、誰にも、何の遠慮もしたくない、我慢したくないという気持ちで一杯であったと思います。壬生は第二の人生、本当に好きな人(多江)との生活によって、自分にとって真の人生を歩みたいと心から願っていたと思います。
 

 

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