壬生は彼なりに筋を通そうとしています。離婚して財産を全て妻に渡しています。お金さえ渡せば良いのかと言われるとそれまでですが、彼として精一杯の気持ちだったと思います。 彼の結婚生活は普通のごく普通のものであった気がします。恋愛結婚し、子供ができ、自然に愛が薄れていく。そしていつしか空気のような存在になる。この夫婦にはすでに愛はなく、一緒に暮らす同居人、そんな存在であった気がします。そして、その味気ない生活の中に、かつての初恋の人が住みつき、再び心が燃えていく。50歳を超えた今、彼は自分の心に正直に生きたい。つまり、誰にも、何の遠慮もしたくない、我慢したくないという気持ちで一杯であったと思います。壬生は第二の人生、本当に好きな人(多江)との生活によって、自分にとって真の人生を歩みたいと心から願っていたと思います。 |