春の雪

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1029日(土)の夜、半田コロナで「春の海」を見ました。半田コロナで一番大きな劇場でしたが、2/3くらいの入りで初日ということを計算に入れても、人気の高さとヒットの予感を感じました。

 この映画は、三島由紀夫の原作<豊饒の海、第一部春の雪>を映画化したものです。

 幼なじみの二人、侯爵家の子息・松枝清顕(まつがえ きよあき:妻夫木聡)と伯爵家の令嬢・綾倉聡子(あやくら さとこ:竹内結子)の悲恋です。

 この映画のキーとなるのが、百人一首の中の次の歌でした。

 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ

 流れの激しい川が、岩によって一時的には別れてもまた、いつか一緒になるという意味。

 身分違いの恋、そして一途な恋ということでは「蝉しぐれ」と共通しますが

根本的に違っていたのは、二人が一緒になれるチャンスが何度もあったということ。精神的には子供で恋の意味もはっきりとわからない男と、人を愛することの意味を知っている大人の女、この二人の感情の行き違いが悲劇の元でした。

 清顕は成り上がり者の父の庇護のもと、何不自由なく育ちます。何でも手に入り、思いのままの若様ゆえに、知らず知らずの内に傲慢な性格を抱えていました。また、精神的に幼いために、自分が愛されていることがわかりません。そして、自分の大切なものが、こんなに身近にあることも気がつきません。

 自分勝手で、我が儘な男が<愛>を学び、自分にとって、真に大切なものに気づいた時、それはあまりにも遅すぎました。それにひき替え、人を愛した女性の強さはものすごいですね。その強さがものの見事に描かれていました。それに比べて男は情けない(^_^;)

 というわけで、<愛>に気づくまでの男のずるさがちょっと鼻についてしまったかな?前半は納得できないかもしれないけど、後半からラストにかけて、それを挽回するから妻夫木ファンも納得できますよ。竹内結子はとにかく綺麗でした。そして、芯の強い女性を見事に演じていました。

 大正時代の華族の話ですから、<雅>の世界を堪能できます。それを描く映像も綺麗でした。映画の題名が「春の雪」ですから、雪のシーンは特に綺麗で良かったです。後半からラストにかけては、哀しくて切なくて涙が止まりません。だから、ハンカチが絶対必要です。

 

 

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