恋のためらい
彼女の部屋の窓から見える部屋の一室で、暴力を女性に振るう男がいました。それを見てやりきれない気持ちになっていましたが、ある日勇気を出して、<何とか力になりたい>と彼女に言いますが、相手にされませんでした。その彼女には、まだ自分が置かれている状況がしっかりと見えていなかったからです。丁度あの頃のフランキーのように……。その時の、フランキーのがっかりした表情が痛々しかった。でも、ラストで男だけが残されて、悔しがっている部屋が映し出されていました。それを見て微笑むフランキー。『ざまー見ろ!』という声が聞こえてきそうでした(笑)。 彼女のトラウマは、<男に対するもの><結婚に対するもの><子供に対するもの>で、難攻不落のお城でした。でも、それをジョニーは必死で開こうとしました。その情熱と誠意が、彼女に伝わり、いつしか彼女の心を開いて行きました。 ラストの歯磨きのシーンが良いね。ここまで言ってもだめかとあきらめて帰ろうとする彼に、何もなかったように、歯を磨きながら彼女が、<歯を磨く?><青いのなら使ってもいいよ>と。 デートをして、セックスもうまく行き、満ち足りたベットの中で聞いた、DJから流れる、ドビッシーの「月の光」。この曲を二人で聴き、彼女が良い曲だと言います。でも、彼から結婚、子供という言葉がでてくると一挙に暗転。気が狂ったように荒れる彼女、何を言っても受け付けません。そこで、彼はリクエストは絶対にとらないと言うDJに電話をかけて、「月の光」をリクエストします。そこで語った愛の言葉。それは、DJに話すという形を取りながら、彼女の心に語っている言葉でした。そして、もう完全にだめだという時に、この曲がラジオから流れてきます。<二人の愛を信じる>との DJのコメントを添えて。この曲を聴きながら、彼女の心もいつしか溶けて行きます。ジョニーが車から郊外の子供を見るシーン。最初何のことかわからなかったが、別れた妻と子供たちだったんですね。自分がいなくなったおかげで幸せになった家族を見るのはどんなに辛く、複雑な心境だったことでしょう。だから、自分もそうなりたいと願って、それをフランキーに求めたわけです。 二人が店のカウンターごしに話し合うシーンは素敵です。ジョニーはフランキーが気になって仕方がない、話がしたくてしょうがない、そんな気持ちが良く出ていました。それに対して、やや斜に構えて、でも本心では話したくて仕方がない、そんなフランキーの気持ちもよく出ていました。これは、『恋の駆け引き』『恋の綱引き』といった所でしょう(笑)。 フランキーの疲れてやつれた顔から、アイアムサムの弁護士役とは全く気がつきませんでした。しかし、だんだん心を開いて、最後には輝くばかりに魅力的な女性になりました。私は、ブスなんて言葉は嫌いだけど、「性格ブス」だった彼女は心を開くことで、「性格美人」になりました(笑)。 |