サイドウェイ
作家をめざすさえない中年教師と結婚を一週間後に控えた売れない俳優。この二人の親友が、それぞれの思いを込めて一週間の旅に出ます。離婚を引きずり、小説を出版することに望みを託すマイルス(ポール・ジアマッティ)は、ワインとゴルフ。今まで散々女遊びをしてきたけど、結婚が決まり、最後の羽を伸ばそうと考えているジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は、もっぱら「ナンパ」。この全く性格も容姿も違う二人が、カリフォルニアのワインロードを旅します。 ジアマッティは、<シンデレラマン>のマネージャー役とものすごく印象が違いますね。言われなければ同じ人物とは到底思えません。こちらは、中年のダメ男をうまく演じていました。決して派手ではないけど、良い味の出せる役者です。役作りがしっかりできる人なんでしょうね。 2年前に別れた奥さんへの未練、わかるような気がします(笑)。ワイン通(ワインお宅)の彼だから、ワインに造詣の深かった元妻は彼の理想の妻だったのでしょう。自分と同じ趣味趣向の人が妻であれば、話も合うし行動も常に一緒でも疲れません(笑)。どうして二人は別れたのでしょうか?きっと、彼女が彼に愛想を尽かしたのでしょう。小説家を目指す国語教師という彼。でも、映画からは小説を書いている必死さが伝わってきません。きっと、何事も中途半端なんでしょう。そんな所が妻の気に入らなかったのかもしれません。決断力がなくてじれったくなる。もっと、「はっきりしてよ」という感じかな(笑)? 中途半端でないのは、ワインだけ。彼の語るワインの話は、きっとワイン通の人なら、なるほどと納得できる話ばかりなんでしょう。同じ趣味の人であれば、限りなく話が続く。たとえばマヤがそうです。でも、それ以外はうまく話せない。いや、女性ばかりでなく人付き合いがへたなんでしょう。だから、小説も売れない(笑)。 マヤ(ヴァージニア・マドセン)は素敵な女性です。顔も整っているけど、落ち着いた大人の女性という雰囲気が良いですね。松坂慶子に似ているなあ〜と思いながら見ていました。彼女はマイルスに好意を持っています。どこが良かったのかな?ワインを語る時の彼は確かに魅力的ですね。ワインを通して人生を深く語れます(笑)。 サイドウェイとは、脇道、寄り道、回り道ですよね。この映画の主題は何なんでしょうか?人生には脇道も大切だよと言っているような気もします。 長い間独身だったジャックの結婚までの脇道。離婚をして、その心の整理をするためのマイルスの脇道。その脇道が、男二人のワインロードへの旅、一人はナンパ目的の旅、一人はワインを楽しむための旅と全く違う目的の旅だけど、どこか似通ったものが感じられます。それは、中年を迎えた二人、今まで何も達成できずにここまできた。それを振り返り確認する旅でもありました。 <人は求めるものを得る>誰の言葉か知らないけど、こんな言葉の通りジャックは痛い目に合い、マイルスはマヤを得ました。脇道にそれたがゆえに宝物を見つけることができました。人生は捨てたものではない、そんな希望を与えてくれました。 人生にはこんなサイドウェイがあって、彩りを添えてくれます。だから、生きることは楽しくエキサイティングなことです。ワインはほとんど飲まないけど、無性に飲みたくなりました。ワインというお酒の奥深さは、人生につながるものがあるのかもしれません。 ワインには、ある年のワインが良いとか悪いとか言われます。その時の気候によって、ぶどうの品質に差が出るからです。そんなワインのことで幕末の頃の人材に思いをはせました(笑)。ワインは寝かせるほど酸っぱさが抜けると言われます。それは、年をうまく重ねた人のこと。ボージョレヌーボーのように、新鮮な味は若い人です。 ワインを語ることは人生を語ることですね。ワインの製造は人間の成長とよく似ています。丹念に丹念に時間をかけて熟成し最高のワインを作る。この時が最高の味、人生の頂点なんでしょう。でも、映画でも言っていましたが、盛りを過ぎたワインも味があっていいわけです。ちょうど、人が良き年を重ねた時の味のように……。 マイルスの旅は、マヤのような女性を求めての旅。いろいろあったけど、彼女は彼のことを理解をしてくれました。彼女が伝えた、小説の正直な感想と評価が、もう一度人生をやり直したいと彼に決意をさせます。最後にマヤの部屋のドアをノックする所で終わりました。それから先の二人のハッピーエンドの姿がイメージできます。 |