幸せの黄色いハンカチ

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1025日(火)にビデオで久しぶりに見ました。最初は映画館で見て、しばらくしてテレビで見て今回で3回目になります。見る時々で印象は変わっていくけど、決まって最後のシーンは熱き感動の涙であふれます(笑)。

 前半のどちらかといえば、どたばた喜劇のような軽い展開から、後半の勇作が光枝との出会いを別れを語るあたりから、一気に内容も濃く、重厚な雰囲気になってきました。

 九州の筑豊で炭鉱夫をやっていた勇作。若気の至りで刑務所にも入り、肩で風を切るようなやくざな生活をしていました。それが30にもなって分別が付くと、これでは自分の人生は台無しになると、一念発起して北海道に出てきます。そして、夕張の炭鉱で働きますが、友はなく、仕事もきつくと初心がくじけそうになった時に、光枝に出会います。

 彼女は離婚歴のある女性で、地元のスーパーのレジで働いていました。毎日、そこで買い物をする勇作は彼女に惹かれ、彼女しか自分を救ってくれる人はいないと惚れ込みます。でも、生きるのが不器用な勇作は、なかなか思いを告げれません。最初にあって、声をかけるのに「半年かかった」と聞いた瞬間から、私には熱いものが……(笑)。こういう不器用な人生を自分も歩んできたからです。好きな人に好きだと言えない、もどかしさ、辛さ、切なさが痛いほどわかります。

 彼女が独身だと知った時の勇作のはしゃぎようが何とも可愛かったです。心からの喜びが自然に態度に出てしまったのでしょう。

 二人が結婚をして、貧しいながらも温かい家庭を築いていきます。そして、待望の妊娠がわかった時、勇作の喜びは頂点に達します。祝杯を上げようと無邪気にはしゃぐ勇作に、病院に行かなければわからないと。なら、一刻も早くそれを知るにはどうしたらと焦る勇作に光枝は、<妊娠しているなら、竿の先に黄色いハンカチ>をつるす、そうすれば炭鉱からでも見えるでしょと。そして、妊娠。でも、その時のハンカチは一つでした(笑)。

 妻は働き者でした、妊娠中なのに無理をして流産をしてしまいます。それがきっかけで、5年前に流産をしていることを勇作は知ってしまいます。勇作は、自分の子供の流産以上に、このことを妻が隠していたことを責めます。「聞かれなかったから言わなかった」この妻の言葉に彼は切れます。そして、酒場でちんぴらと喧嘩をして殺してしまいます。

 6年の懲役刑で網走刑務所に入ります。入所と同時に彼は妻のことを思って、離婚を迫ります。彼の意志が固いと考えた彼女は仕方なしにそれに応じます。いつもあなたは自分勝手、結婚する時も別れる時も……。涙ながらの彼女の言葉が胸にしみます。

 刑期を無事終え、出所した彼はその足ではがきを彼女に送ります。「もし、まだ一人で自分を待っていてくれるなら、竿の先に黄色いハンカチを上げておいてくれ」もし、それが上がっていなければ、自分はそのまま立ち去り、二度と会わないからと。

 欣ちゃんと朱美にとって、この旅はサイドウェイですよね。欣ちゃんは、彼女に振られたことをきっかけに、町工場もやめ、赤い新車を買って、北海道へナンパの旅に出ます。新しい恋を見つけるために、ただそれはゲームのようなその場限りの薄っぺらい恋でした。一方電車の売り子をしていた朱美は、恋人だと思っていた男から裏切られ、傷心の旅に北海道に来ていました。この二人の出会いから物語は始まります。この二人の安易な恋愛ごっこが、勇作との出会いで、真の愛情に気づき、目覚めて行きます。そして、最後は愛し合います。欣ちゃんの軽薄な恋愛観と勇作の一途で重い恋愛観の対比が面白いですね。それは、二人の人生観でもありました。それを欣ちゃんは最後に気づきます。新しい人生観を取り戻し、彼の人生は明るく輝くでしょう。

 <黄色いハンカチ>のことを話したことで、3人は勇作の家のある夕張へ向かいます。でも、家に近づくにつれてあれほど勇ましい勇作も、からっきし意気地がありません。車の中で目をつむってなにかをひたすら祈るようです。そして、あのラストシーン。竿の先に無数の黄色いハンカチ。妊娠した時が一枚だったのと比べると、その数の多さが彼女の熱き思いを代弁していました。遠くから二人を映し、見る側に想像をさせる手法が良いですね。それが、より一層感動を与えてくれます。

 

 

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