クラッシュ

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 この映画は、第78回アカデミー賞の最優秀作品賞に輝いた作品です。見終わった時の印象は、「凄げえ〜〜」の一言ですね(笑)。現代におけるアメリカの人種差別と銃の問題を扱った問題作ですが、そのすさまじいこと、すさまじいこと(笑)。

 人種差別というと、白人対黒人と考えがちですが、現実のアメリカは、それだけでなく、アジア系、アラブ系などの雑多な人種への、それも相互の差別があるわけです。

 差別する側も、される側も、それが現実で仕方ないとあきらめながらも、そのストレスは相当なもの。その実態をあからさまに知らせてくれた作品でした。

 また、銃世界であるアメリカの怖さも現実のものとして見せてくれました。銃とは一瞬の油断ができないもの、相手がポケットに手を入れようとしただけで、一気に緊張が高まります。不審者に対する、警察官の過剰とも思われる行動、でも、その裏には日常の銃の恐怖が体験としてあるのでしょう。

 クラッシュとは「衝突」。この題名の通り、都会に住む人間と人間がある日、クラッシュして出会う。それまではいても存在すら知らないのに、そこで一気に姿を現す。

 自己主張の国アメリカでは、とにかく自分の主張を通そうとします。日本人では考えられないほど、エキサイティングにぶつかる。夫婦であんな汚い言葉で、相手をののしりあったら、もう一緒にいられないと思うのは日本人。でも、アメリカではそんなことはお構いなしに、とにかく自分の主張を言い張る。

 少しは、相手の気持ちも考えたら言いたくもなるが、そこが国民性の大きな違いなんでしょう。

 映画は、一つの交通事故(クラッシュ)をきっかけとして、次々に問題が起こって行きます。一つ一つは関連がないように見えても、しだいにつながり、最後は大きなテーマを形作る、そんな映画でした。でも、この出来事の一つ一つに人間的な深い味があり良かったです。

 人種差別をする者の裏に潜む個人的な悲しみ、それを乗り越えて行くには、最後は「愛」である。そんなことを教えてくれた映画でした。なるほど、作品賞をとるだけのことはあります。

 

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