パッチギ

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2004年 井筒和幸監督作品

h18.6.2DVDで見る。

<あらすじ>

 題名の<パッチギ>とはハングル語で「頭突きのこと」。そこから、突破するとか、現状を打破するにつながるそうです。

 設定は変えてありますが、1968年の日本の京都に舞台を移した、現代版ロメオとジュリエットです。

 朝鮮高校と京都府立東高校の不良グループの対立と乱闘は、日増しにエスカレートして行き、危険な状態になっていました。

 この危険な状態をなんとかしたいと思った主人公である康介に府立高校の担任が、「戦いを終わらせるには戦いだ」との毛沢東の言葉を託して、敵対する朝鮮高校へ、サッカーの親善試合の申込みに行かせます。

 そこで、康介は「イムジン川」を演奏する吹奏楽部の中に、フルートを吹くキョンジャに一目惚れします。でも、彼女の兄はその学校の番長、とても交際が認められるわけがありません。

 意気消沈する彼に、楽器店で知りあった坂崎が励まし、「イムジン川」を教えます。

 そんなある日、勇気をふるって「ザ・フォーク・クルセダーズ」のコンサートに彼女を誘ったことがきっかけで、彼女に近づくことができました。彼は彼女に好かれたい一心で、ハングル語を勉強し、兄やその友達の番長グループともつき合っていきます。

 そんな中で、兄の親友がリンチで殺されます。その葬儀に参列した彼は、そこで過去の歴史を聞かされます。戦時中の朝鮮を植民地にした日本、その時の悲惨でむごい歴史。この厳然たる事実は、二つの民族を和解させない大きな川。まるで「イムジン川」のようなものでした。

 そんな歴史すら知らずに、安易に彼女のことを愛していた自分が情けなくなった彼は、ギターを川に投げ捨てます。

 でも、歌を捨てることに一抹の未練のあった彼は、勝ち抜き合戦のラジオ局に行き、放送禁止となっていた「イムジン川」を熱唱します。それをラジオで聞いていた彼女は、彼の気持ちがわかり放送局に走ります。

 1968年の日本、その時私は18歳の大学の一年生でした。その時代の日本は、大学紛真っ只中で、一年生の時の授業の半分がその影響でつぶれていました。

 アメリカ帝国主義、ベトナム戦争反対、共産主義革命、毛沢東語録。そんな硬派で騒然とした時代でしたが、私にとってはなつかしい青春時代でした。

 エレキブームからフォークブームへ。メッセージ性の高い歌が歌われていました。ジョーン・バエズやボブディランの反戦フォークを筆頭に、この映画の主題にもなった「イムジン川」も静かに流れていました。

 在日には、在日本大韓民国民団(民団)と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の二つの団体があります。朝鮮戦争の結果38度線で国が分断されたことに影響を受け、北側に故郷がある人は朝鮮総連に入ったのでしょう。

 あの映画の中でも帰国船で北鮮に帰ると言う話がありました。希望一杯持って、祖国の発展と建設のために帰るというものでした。今はその時の状況がわかるので、いくなと止めることができますが、その時は先にある地獄が見えなかったわけで、それを考えると辛いものがあります。

 今から40年前の差別。今も完全にはなくならずに残っているのでしょう。柳美里の小説を読むとそんな実態が書かれています。差別される側の痛みの大きさを改めて知らせてくれた作品でした。

 井筒和幸監督、<たのしい映画>とは何か?をよく知っている監督です。この映画、民族間の差別という重い問題を扱っているけど、そのことはしっかりと伝えながらも、とにかく面白い映画に仕上げています。次に何が出てくるか?テンポの速い展開で見るものをあきさせません。

 普通に考えれば、めちゃくちゃしんどい状況だけど、それを半ば強引にハッピーエンドにもっていくところが憎い。ロミオとジュリエットは悲劇で終わるけど、この映画はハッピーエンドで、そのストレスを発散させてくれました(笑)。

 

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