羅生門

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羅生門(1950) h19.1.8

 黒澤映画としてあまりにも有名な作品でしたが初めて見ました。題名のイメージから、何か重いものを感じて、敬遠をしてきたからです(笑)。

 この映画は、芥川龍之介の小説『薮の中』を黒澤明が映画化したもので、第12回ヴェネチア映画祭のグランプリ、第24回アカデミー賞の名誉賞(外国語映画賞)を受賞しました。それによって、世界に黒澤明や日本映画が紹介されるきっかけとなった作品です。

 同じく芥川の『羅生門』という短編小説も脚本の中に加えてあるので、この題名がつきました。

 旅をする武士(森雅之)とその妻(京マチ子)。その妻に一目惚れした盗賊(三船敏郎)が武士を殺し、妻を強姦するという事件。
 この事件を目撃した杣売(志村喬)が検非違使に届けて、盗賊が捕まるが、それぞれのこの事件に対する説明が食い違い結局どれが真実かわからなくなる。まさしく、事件は藪の中である。


 ストーリーが面白く、どうなっていくかの予想がつかない。簡潔でわかりやすく、さらに早い展開で音楽も良い。これは、黒澤映画に共通したこと。特に音楽が効果的で、その場面の感情や状況を音で見事に現している。

 白黒だけど、うだるような暑さをうまく演出し、この殺人事件が真夏の白昼夢のように感じさせる。その中を馬に乗る、京マチ子の涼やかな姿が印象的。

 決して肌を露出しているわけではないし、過激なシーンがあったわけではないが色気を感じた。それは役者の演技なり個性、監督の力量のためである。

 ラストシーンの<捨てられた赤子>を巡るやりとりで、人間の誠実さ、信じるにたるものである事実をみせてくれ救われた。とにかく、ハッピーエンドは良い。

事実は動かせなくても、それを自分の都合の良いように言いくるめる。そんな人間のエゴ、身勝手さを描いた作品である。
 

 

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