守護神

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守護神 h19.2.26

 久しぶりに、彼の持ち味が活かされたケビン・コスナーらしい映画でした。2時間半近い映画だったけど、ずっと映画に集中でき、時間が短く感じました。最近元気のなかった彼の復活の映画となるでしょう。

 アメリカ、沿岸救助隊の救難士の活躍を描いています。チームの友情、師弟の愛、夫婦の愛、恋愛と、彦麻呂風にいうと「愛の宝石箱や〜〜☆☆」ですね(笑)。

 荒れ狂う嵐の中での救助は、本物の海のような臨場感と迫力がありはらはらドキドキの連続、手に汗握るものでした。でも、映画はそれだけで終わらずに、若い救難士を養成する訓練学校のことを中に入れたこと、それが絶妙のスパイスとなって、この映画に深い味を加えました。

 伝説の救難士ベン・ランドール(ケビン・コスナー)は、人命を救うことを生き甲斐に、何の迷いもなく生きてきましたが、ある日、救助中の事故により親友を失います。

 どうして彼を自分は助けることができなかったのか?その自問自答の毎日、夢にうなされて夜中に起きることも何度もあり、過去の亡霊に支配されていました。されにそんな彼に、長年連れ添った最愛の妻から離婚を言い渡されます。

 仕事だけでなく、全てに自信をなくした彼は、辞職を覚悟しますが、上司に後輩の育成を依頼され、A級学校(エリート校)の教師になります。

 彼のスパルタ教育は、今までの学校のやり方と違っていたので、教官達の反撥を受けますが、彼の輝かしい実績がものを言い、次第に教員達も彼の指導法に理解を示し、協力をして行きます。

 このスクールにフィッシャー(アシュトン・カッチャー)が入ってきます。彼は高校の時の水泳のチャンピョンで、ベンの作った記録を次々に塗り替えて行きます。

 最初は自分勝手で自己主張の多い彼でしたが、だんだんと成長し、チームの輪を考えるようになっていきます。

 彼には、誰にも言えない大きな傷がありました。それは、水泳のチーム仲間を、自分が運転したバスで事故死させたことです。そのことに深く傷ついた彼は、仲間を失うことの怖さから、仲間を作ることを躊躇していたのでした。彼も、ベンと同じように、過去の亡霊に縛られていたわけです。

 映画にはいろいろな名場面がありましたが、その中で、フィッシャーが海軍士官専用バーで喧嘩をして退学処分を言い渡されるために、ベンのいる教官室を訪れたシーンが印象に残っています。

 彼は真っ先に、今回のことは自分一人の責任で友達には関係のないことだと、友達をかばいます。それは、彼が自分よりも仲間を大切にしたいという気持ちの表れ。

 これを見抜いたベンも凄いですね、そして、彼の退学を取り消します。そして、二人の同じ傷を持ったもの同士の、心の通いあい。なかなか見応えがありました。

 そして、あろう事か、フィッシャーをその海軍士官専用のバーへ連れて行きます。それは、自分たちのやっている仕事の偉大さと誇りを教えるためでした。「海軍の連中は命をかけて戦っているから、偉いと思っている。でも、我々は毎日命をかけて人命を救っている」だから、誇りを持て。

 ベンは、「今までに何人救助した?」の質問には、救助した人数ではなくて、救助できない数を22名と答えた。これが彼の救難士としての、考え方を象徴しています。

 それからラストシーン。退職をしたのに、フィッシャーの大ピンチを知り、命をとして助けに行くベン。ようやく助かったと思ったら、ヘリからのワイヤーが破損し、二人では助からない状況になる。

 そこで、ベンは自分を犠牲にして、海に身をなげ、若く有望な彼を助ける。きっとそうなると思ってはいても、どこかで助かってほしいそんな思いをしていました。

 でも、そのことでベンは伝説となり、永遠に人々の心の中に生きることになります。

 ああこれで終わるのか、かなしいなあと思っていたらフィッシャーが彼女に気持ちを伝え、ハッピーエンドとなったのは、本当に良かった(笑)。救われます。

 ベンと奥さんとの関係。愛する人が、常に命の危険をさらす、それをじっと家で待っている辛さ。それに我慢ができずに、遂に別れることを決意します。愛すればこそ、その決断の辛さが伝わってきます。

 彼女は、ベンがベンらしくあるには、あの仕事以外にないことはわかっています。
そして、皮肉なことですが、最後に彼の死によって、彼女は初めてその辛さから解放されます。

 フィッシャーと彼女との関係。彼女はことあるごとに、カジュアルな関係をのぞむと言います。それは、あなた達は訓練が終われば、8週間でこの町を出ていく、でも私はずっとここに住んでいるから。過去に傷つくような恋愛をしたのかもしれません。
だから、深入りしたくない。この二人の恋愛が、この映画に色を添えました。

 

 

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