白いカラス

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白いカラス h18.10.15

 2回目です。題名の<白いカラス>とは?本来カラスは黒い、それと同じように黒人は黒い。これは、白い黒人として生まれた人間の物語です。彼は、一つの嘘(黒人)を隠すために幾重にも嘘を重ね、自分の生き方を狭くしています。

 コールマン(アンソニー・ホプキンス)は、才能にも容姿にも恵まれた青年でした。でも、彼の皮膚は白く、白人と同じ姿形ではあるが、黒人でした。その証拠に、両親と兄弟ははっきりと黒人だとわかります。

 愛し合っていた恋人が、自分の母親にあった瞬間、<私には耐えられない>と言い、彼から去って行きます。このことをきっかけに、彼は黒人であることを隠し、白人として生きていくことを決意します。それは、母親や家族との決別でした。そして、その秘密は彼の妻にも秘密でした。

 その甲斐あって、大学の教授、そして学部長にまで上り詰めるが、ある時、黒人に対する差別発言が問題になり、大学を追われます。また、それを聞いた妻もショックのために心臓発作で死にます。

 もし、自分が黒人であると告白をすれば、無実をはらすことができたのに、それでも彼は言いませんでした。人種差別にもっとも遠い存在の彼が疑われます。なんとも、皮肉な結果です。これも、自分の人種を隠して(嘘をついて)教授になったためです。

 それに対して、フォーニア(ニコール・キッドマン)は、家庭的に恵まれない不幸な女性でした。裕福な家庭に育ちますが、両親の離婚のため、母と再婚相手の所へ行き、再婚相手の男からセクハラを受けます。そのことを母親に言っても相手にしてもらえないので家出。それは、母親の無関心が最大の原因です。その後、結婚をして子供を産みますが、
ベトナム帰りの夫は戦争のために、精神に異常をきたし、暴力と過度の干渉、おまけに子供を火事で亡くすという事故が重なって彼女は夫から逃げて、一人で掃除婦をしながら生活をしています。

 そんな時、二人は偶然出会い、同棲をすることになります。60代の彼が、34歳の彼女に彼女なしでは生きていけないほどおぼれます。<これは、最高の恋愛ではないが、最後の恋愛である>という彼のこの言葉は、胸に染みます。

 彼女の抱えた問題、離婚、親の虐待、精神障害などは現代のアメリカの病患です。

 彼女はカラスに感情移入をします。それは、自分は白人ではあるが、白鳥ではなく、嫌われ者のカラスであると言っているようです。コールマンとは、違った意味での差別であり、落ちこぼれとして挫折を感じています。現代のアメリカの生んだ格差社会をみる思いがします。

 この似たもの通しの二人が、一緒にくらし、喧嘩したり、愛し合う仲で、少しづつお互いを理解し、認め合っていきます。そして、お互いの秘密や過去を語り、一層深い絆で結ばれて行きます。
 それにしても、キッドマンはきれいですね。透き通るような白い肌が妖艶でした。彼女はいろいろなタイプの役ができるけど、私的には、ここのキッドマンが一番魅力的でした。
 

 

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