父親たちの星条旗

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父親たちの星条旗 h18.11.5

 クリントイーストウッド監督の作品。太平洋戦争の激戦硫黄島の戦いを日米双方の立場と視点で描く2部作<父親たちの星条旗>と<硫黄島からの手紙>の内アメリカ側の立場で描いた作品。

 硫黄島の象徴である、すり鉢山に勝利の星条旗を立てた6人の兵士。その写真が新聞にのることで、アメリカ国内では一躍英雄になります。

 それに目をつけたのが国。彼らを利用して、戦時国債を買わせるための宣伝に使うことを考えます。そこで、生き残った3人の兵士が、急遽国に帰還させられます。そして、国に帰った彼らを待っていたのは、英雄としての虚像でした。

 国民の大歓声の中、彼らは国債を買わせるための国の宣伝の道具として、各地にツアーに引っ張り回されます。

 3人は知っていた、自分たちが真の英雄ではなくて、死んでいったものたちこそ英雄だと。

 衛星兵の<ドク>の息子が父親を語るという形で物語が進む。

 監督は実にうまい。今、帰還してPRの旅、硫黄島での戦いの3つの場面を交互に組み合わせて重層的に描いていたのはさすが。飽きさせない、変化を持たせて、眠気を誘わない。

 生き残った3人は英雄だという重圧に耐えられない。自分たちは違うという感覚。

 英雄は必要性によって作られる。アメリカが戦争を維持し勝利を得るためには莫大なお金が必要。もう国庫はガラガラの状態。国債を売るためには、彼らのような英雄を作り、英雄に国債を買うように言ってもらうことが効果がある。

 インディアンに対する差別の問題。

 利用するだけ利用して、最後は面倒を見ずに切り捨てる。権力とはそんなもの。英雄の寂しい末路を見る思い。

 1945年当時のアメリカ、日本の貧困とは雲泥の差そこには豊かなアメリカがあり、戦場とはあまりにも違う世界。徴兵制ではなく、志願兵だと言っていた大学卒は行かないとの発言もあり、差別も見え隠れする。

 戦場の兵士は日米そんなに違わないのに、銃後の国の違いはものすごい。これでは、戦争は勝てない。

 ラストでの言葉
国のために死んでいったのではない、彼らは戦友のために死んでいったのだ。これが、この映画の言いたかったこと。この戦いだけでも、日米相応に甚大な人的被害があった
彼らはなんのために戦ったのだろうか?

イーストウッド監督はやはりうまい。まずは、視点とらえ方が良いですね。戦争を真正面からとらえるのではなくて、間違って英雄に祭り上げられた兵士たちの目を通してあの戦争を描いている。戦地と国との対比も面白い。政治家とか、軍人でも前線にいないものは
兵士を駒のように使って、情け容赦しない。政治家は、それを自分たちに都合の良いように使っている。

 ただ、ミリオンダラーベイビーを見てしまうと、それには及ばない。相当期待していただけに
評価は厳しくなるかもしれません。☆3つ半です。
 

 

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